熱帯熱マラリア原虫の毒性変異

1988 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 62480146
• 研究機関: 群馬大学
• 研究代表者: 鈴木 守 群馬大学, 医学部, 教授 (60056033)
• 研究分担者: 杉岡 由美子 群馬大学, 医学部, 助手 (10179137) ; 脇 誠治 群馬大学, 医学部, 助教授 (10056286)
• キーワード: マラリア / 毒性 / アミノ酸配列 / cDNA / ウエスタンブロット / モノクローナル抗体 / ポリクローナル抗体

研究概要

63年度においては、毒性変異のモデルとしてすでにわれわれのグループが確立させた強毒株ネズミマラリア原虫(NK65)とその弱毒変異株(XAT)とを比較し、抗原分子に表現された両者の相違を追求した。O'Farrelの二次元電気泳動法により、NK65に存在し、XATには欠損する29KD抗原分子をスポットとして切出し、アミノ酸配列を決定した。このアミノ酸配列は、cDNAをクローニングするさいの重要な選別基準となる筈である。このように弱毒株と強毒株との間には抗原分子として表現される変化があることが判明したので、マラリア流行地で得たさまざまな病歴の供与者から得た血清をポリクローナル抗体として使い、原虫抗原を一定化させた条件下でウエスタンブロットをおこなった。その結果、熱帯熱マラリアの急性期患者から得た血清が特に47KD抗原分子と強く反応することが判明した。この知見は、流行地の血清供与者の病歴をくわしく聴取し、ウエスタンブロットによって得られた結果とつきあわせれば、毒性に関与のある抗原分子を特定できる可能性があることを示唆している。熱帯熱マラリア原虫(最も強毒)に対して多数のモノクローナル抗体を作成し、より弱毒な性質を示す三日熱マラリア原虫との間の共通反応性について調べたところ、一部のモノクローナル抗体は、熱帯熱マラリア原虫とのみ反応し、三日熱マラリア原虫とは反応しなかった。三日熱マラリア原虫に対してモノクローナル抗体を作成して熱帯熱マラリア原虫との反応性をしらべるても同様の結果をえた。この知見もまた、毒性関与抗原分子が特定できる可能性を示唆していると考えた。ヨザルの感受性が何等かの理由により、低下したため、動物実験により直接的に熱帯熱マラリア原虫の毒性を検討する実験は今年度には進めることができなかった。

研究成果

• [文献書誌] M.Suzuki;S.Waki;I.Igarashi;T.Takagi;T.Miyagami;S.Nakazawa: Zentralbatt fur Bakteriologie Mikrobiologieund Hygiene. A264. 487-325 (1987)
• [文献書誌] T.Miyagami;I.Igarashi;M.Suzuki: ibid. A264. 502-512 (1987)
• [文献書誌] K.Sato;Y.Fukabori;M.Suzuki: ibid. A264. 487-495 (1987)
• [文献書誌] S.Waki;J.Tamura;T.Takagi;M.Adachi;M.Suzuki: Parasitology Research. 73. 303-305 (1987)
• [文献書誌] Y.Sugioka;M.Suzuki;K.Sugioka;M.Nakano: Fed.Europ.Biochem.Soc.223. 251-254 (1987)
• [文献書誌] T.Takagi;S.Waki;S.Kogure;Y.Sugioka;M.Suzuki: Parasitology Research. 74. 436-440 (1988)
• [文献書誌] T.Takagi;S.Kano;G.Masuda;M.Suzuki: Trans.Roy.Soc.Trop.Med.&Hyg.82. 384 (1988)
• [文献書誌] S.Kano;T.Takagi;A.A.El Gaddal;M.Suzuki: ibid. 1989. (1989)
• [文献書誌] K.Sato;S.Kano;H.Yamaguchi;F.M.Omer;S.H.Safi;A.A.El Gaddal;M.Suzuki: submitted for publication to Trans.Roy.Soc.Trop.Med.&Hyg.