研究概要 |
抗日本住血吸虫モノクローナルIgE抗体(SJ18ε.1)の感染防御作用を明らかにするため, 下記の点について検討した. 1.モノクローナルIgE抗体の精製:イオン交換クロマトグラフィー及びゲル瀘過を組み合せた高速液体クロマトグラフィーシステム(FPLC)を用いて, ハイブリドーマの培養上清あるいは移植マウス腹水中に産生される抗体の精製を行った. その結果, 最終的に単一ピークとして精製IgE抗体を得た. この分画の単位蛋白当りのPCA抗体活性は250倍に増加していたものの, 総PCA抗体価は約1/400に減少しており, FPLCは抗体活性の安定化の面で難点があるものと考えられた. 2.In vivoにおける防御免疫の誘導とその細胞免疫学的機序:日本住血吸虫セルカリアによる攻撃感染の前後に本抗体をマウス腹腔内または皮内に投与し, 正常血清投与の対照群と比較した. また, その際, あらかじめ犬回虫仔虫包蔵卵の投与によって好酸球増多を誘導し, 好酸球の示すIgE抗体依存性のシストソミュラ傷害作用による受動免疫増強の有無についても検討した結果, 次の成績を得た. (1)SJ18ε.1を攻撃感染の前日, 当日及び2日後にマウス腹腔内に投与すると, 正常血清投与対照群と比較し, 回収虫体数の著しい減少が認められるが, 虫体の肺通過後に同様に投与した場合には有意の減少は認められなかった. (2)好酸球増多の誘導によって, 虫体回収率の減少が一層著明になるが, この反応は正常血清投与群でも認められるため, IgE抗体依存性傷害作用自体の増強によるものとは考えられなかった.(3)本抗体で感作した皮膚部位から攻撃感染を行った場合, 好酸球増多誘導群でも有意の虫体回収率減少は認められず, 組織学的にも虫体周囲への細胞集積はみられなかった. (4)In vitroでは, 本抗体の存在下で, 好酸球及びマクロファージのいずれによっても, シストソミュラ殺滅作が認められた.
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