研究概要 |
1,わが国に分布する赤痢アメーバ株の調査:現在第2次大戦中南方に出征していた旧軍人より赤痢アメーバの分離を試みており既に十株以上分離している. これに対しアイソザイム分析, DNAフラグメントの分析などを試みつつある. 2, ELISA, 及びウエスタンブロッティングについて:予備実験より我々の研究室で改良したELISAが非常に感度が高いことが判明したので, 無症状のキャリアーの血清を含むアメーバ症の各病型の血清に対し調査したところ, 無症状のキャリアーでも85%程度がコントロールの最大値より高い吸光度を示すことが判った. 腸アメーバ症, アメーバ性肝膿瘍の場合は 95%以上が明瞭に陽性と判定された. この調査の対象となったキャリアーはゲル内沈降反応では25%が陽性であった. これらキャリアーに関しては吸収試験, ブロッティング試験も行ない, 特異的抗体が検出されていることが確認された. 現在症状の有無にかかわらずゲル内沈降反応陽性は強毒株感染を示すものと理解されていることから, ゲル内沈降反応とELISAを併用することによって対象グループに分布している赤痢アメーバの病原静を知り得る可能性が開かれたものと思われた. キャリアーにおける特異抗体産生はウエスタンブロッティング法によっても確認された. 3, ELISA, ゲル内沈降反応を用いた血清疫学的調査:以上のデータに基づいて, 名古屋地区より男性同性愛者300名の血清を採取しELISA, ゲル内沈降反応を実施した. その結果, 4, 7%は両法とも陽性であり, 更に5, 2%がELISAのみ陽性と判定された. これらのデータは欧米と異なり, わが国の男性同性愛者には強毒の赤痢アメーバが広がっていることを示しているものと考えられた.
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