研究概要 |
(1)ストレプトリジンOの膜障害能を,蛍光色素を封入したリン脂質とコレステロールから成るリポソームを用いて測定した. 従来, この毒素によるリポソームからの内部マーカーの放出を肯定する報告と,否定する相反した報告がなされていたが,我々の結果は前者を支〓していた. リポソームの毒素感受性は, コレステロール含量によって影響を受けるが,リン脂質の分子種の違いによっては左右されなかった. (2)前述の結果を応用して,ヒト血清中の抗ストレプトリジンO抗体価を測定する方法を確立した. 即ち,リポソームをRantgーRandall法におけるウサギ赤血球の代りに用いる方法である. リポソームは安定で少なくとも半年間保存可能であること,リポソーム標品のロット間の違いが無いこと,また血清の希釈が不要であることなどの点で, 現在もっとも頻繁に用いられらいるRantgーRandall法よりも優れていると考えられる. (3)ブドウ球菌α毒素のリポソームへの結合を4℃(低温)と37℃(高温)の二通りの温度にて測定した. 高温では, 結合したα毒素の大部分が六量体を形成するのに対して,低温では大部分が単量体のまま存在していた. (4)ブドウ球菌α毒素の六量体に特異的に反応する抗体を調製した. この抗体は単量体とは反応せず,単量体が六量体を形成することによって分子の構造変化が起こることを示す初めての結果が得られた. (5)腸炎ビブリオ菌耐熱性溶血毒素(TDH)の膜障害能を,種々の赤血球膜から抽出した全脂質混合物,あるいは種々のリン脂質とコレステロールから成るリポソームを用いて測定した. リン脂質とコレステロールから成るリポソームへのTDHの結合は認められなかった. ガングリオシドGT_1bを組込んだリポソームへのTDH結合は, ごく微量検出されたが,この結果からGT_1bがTDHのレセプター分子であるとは断定し難いと考えられる.
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