研究概要 |
単純ヘルペスウイルス(HSV)2型のDNA複製に関与する蛋白質の同定, 及びその性状について検討し以下の結果を得た. 1.HSV DNA複製におけるDNAトポイソメラーゼの関与について検討した. 阻害剤(カンプトテシン, エトポサイドVPー16)を用いた実験から, HSV DNA合成にはトポイソメラーゼI,IIが共に関わっていることが強く示唆されたが, 感染細胞中にはI,II型ともに新しい活性の誘導は認められなかった. また, 各阻害剤に抵抗性のウイルス変異株を分離することができなかったことから, ウイルスDNA合成には細胞側のトポイソメラーゼI,IIが関与していることが示唆された. HSV DNAポリメラーゼとトポイソメラーゼが複合体を形成している可能性について現在検討中である. 2.アクリドンアルカロイドの一種シトルシニンIがHSV DNA合成を持異的に抑制することを見い出した. この薬剤に抵抗性の変異株が分離されることから, 標的はDNA合成に関与するウイルス蛋白質であることが示唆された. HSV DNAポリメラーゼに対する阻害作用は認められない. 現在, この薬剤の標的を決定するべく生化学的, 遺伝学的両面から解析を行っている. 3.既に分離したHSV DNAポリメラーゼ遺伝子をT7プロモーターを含むプラスミドに挿入し, T7RNAポリメラーゼ遺伝子をもったphageを重複感染することにより大腸菌内でHSV DNAポリメラーゼを産生する系の作製を試みた. 転写産物の確認はできたが, ポリメラーゼ活性のある蛋白質の産生には現在のところ成功していない.
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