単純ヘルペスウイルス(HSV)2型のDNA合成に関与する蛋白質及びウイルスDNA合成を標的とする阻害剤について研究し以下の結果を得た。 1)HSV2型の増殖はDNAトポイソメラーゼI(TopoI)の特異的阻害剤であるカンプトテシンに極めて感受性で、0.1μg/mlの濃度でウイルスのプラック形成は90%以上抑制された。ウイルスDNA合成も強く阻害されたが、感染細胞をpermealizeした場合には、カンプトテシン50μg/mlの添加によってもウイルスDNAへの^3HーdTTPの取り込みは全く阻害されなかった。一方、ホスホノ酢酸(PAA)は同一条件下でDNA合成を強く抑制した。感染早期における作用を調べた所、カンプトテシンによりウイルス早期遺伝子の転写が強く阻害されていることが明らかになった。感染15時間後の細胞より粗抽出液を得、TopoI活性の溶出パターンを非感染細胞のそれと比較したが、両者の間には全く差が認められなかった。以上のことから、TopoIはHSVゲノムの転写に関与していること、その酵素は細胞由来のものであることが強く示唆された。 2)新しく見い出したウイルスDNA合成阻害物質の標的は、ヌクレオチド代謝に重要な役割をもつリボヌクレオチド還元酵素であることが示唆された。 3)HSV DNAポリメラーゼの各ドメインの機能を明らかにするため、N末側、中央部、C末側の3ケ所を個別に大腸菌内で発現させることを試みている。また、推定されたアミノ酸配列をもとに各部分の合成オリゴペプチドを作成し、各部分に対する抗体の作成を試みている。
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