研究概要 |
昭和62〜63年度に水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)の主として糖タンパク(gp)の細胞内processing及びその生物学的活性を解析した。(1)以前我々はVZVタンパクの細胞内付加について解析したが今年度は更にVZVーgpの脂肪酸付加について解析した。VZV感染細胞を[^3H]パルミチン酸でラベルし、可溶化後種々の単クローン抗体を反応させ、SDSーポリアクリルアミド電気泳動法(SDSーPAGE)にてVZV特異gpを分析した。その結果gpI-III共に脂肪酸が付加されていることが判明した。又セルレニン(脂肪酸の生合成阻害剤)を用いた実験ではVZV-gpの成熟には脂肪酸の付加が必須であることが明らかとなった。(2)VZVーgpI,II,III,IV遺伝子のコード領域を含むDNA断片をクローニングしこれらのDNA断片を更にワクチニアウイルス(VV)のチミジンキナーゼ(TK)を含むプラスミッドに組み込んだ。これらのVZV-gp領域を組み込んだVV-TKプラスミドをRKー13細胞にtransfectし、更にVVを感染させ組み換えVVを作製させた。その結果VVーgpIのみはimmuno blot法でVZV-gpの発現が確認されたが他のgpは発現しなかった。しかしNorthern blot法にてmRNAは検出されたがgpIIは若干その長さが予想されるものより短かかった。VV-gpIウイルスを細胞に感染させるとVZV感染gpとほぼ同じポリペプチッドが作製されていた。又このウイルスは免疫原性もVZVと同様であり誘導された抗体は補体存在下で中和能が見いだされた。(3)VZVーgp抗原による皮内テストの有用性を単純ヘルペス(HSV)及びVZV感染モルモットを用いて、又はHSV感染歴のある水痘患者で解析を行った。中和反応と同様に皮内テストにおいてもVZVとHSVには交叉性を認められなかった。ヒトにおいても同様の結果が得られこのことによりVZV皮内反応には水痘感染特異的であることが判明し水痘感染のスクリーニングに用いられることが示唆された。
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