移植免疫や自己免疫疾患において最も重要な役割を果たしているヘルパー型T細胞の活性化機構が最近急速に解明されてきた。しかしながらその制御を目指す為にはヘルパー型T細胞の活性化と併行して不活性化の誘導を図る努力がなされねばならない。本研究はこのような観点から本年度は次に述べる如く、アロ抗原反応性ヘルパーT細胞の寛容誘導及びそれに基づく移植片生育延長効果を導くことに成功した。 抗アロ免疫応答に関与するT細胞の解析より、T細胞フェノタイプと機能との間には相関は認められず、CD8^+T細胞集団にもヘルパーT細胞(Th)集団が存在することが明らかになされてきた。このCD8^+型ヘルパーT細胞集団は、アロクラスI抗原を認識すること、その頻度は決して低くなくCD4^+型ヘルパーの1/3程度の頻度を有すこともわかっている。今回このCD8^+Thの免疫寛容誘導について検討した。その結果、(1)C57BL/6とbm1マウス(クラス1 MHCのみ異なる)のコンビネーションにおいて、bm1脾細胞をC57BL/6マウス静脈内に前感作することにより、bm1アロ抗原特異的なThの免疫寛容が誘導されることが明らかとなった。(2)又皮膚移植においても生着期間の延長効果が認められた。(3)更にbm1脾細胞静脈内前感作後、bm1皮膚移植片をacceptしているC57BL/6マウスではTh型CD8^+T細胞のみならず抗bm1 CTL型CD8^+T細胞の寛容も誘導されていることも確認された。本研究より、アロクラスI抗原反応性CD8^+Th細胞の寛容誘導とその効果が初めて明らかにされることになった。
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