移植免疫や自己免疫において最も重要な役割を果たしているヘルパー型T細胞の活性化機構が最近急速に解明されてきた。しかしながらその制御を目指すためにはヘルパー型T細胞の活性化のみならずその非活性化の誘導を図る努力がなされねばならない。本研究はこのような観点からアロ移植抗原反応性ヘルパー型T細胞を寛容誘導に導く方法を確立し、その寛容誘導の免疫学的機序を解析することを目的とし以下の成果を得た。 (1)アロ移植抗原反応性DTH型T細胞の寛容誘導:アロリンパ球を門脈内に移入すること又はneuraminidase処理したアロリンパ球を門脈内でなく静脈内に移入することによりアロ抗原特異物DTH型T細胞の寛容誘導が可能であることを見い出した。 (2)寛容誘導の免疫学的機序の解析:上記処置により寛容になった動物には三つの寛容因子(又は事象)が誘導されていることを明らかにした。(a)サプレッサー細胞、(b)抗イディオタイプ抗体、(c)アロ抗原特異的T細胞のclonal deletion。 (3)アロクラスIMHC抗原反応性CD8^+型ヘルパーT細胞の寛容誘導:アロクラスIMHC抗原反応性CD8^+型ヘルパーT細胞(Th)の免疫寛容誘導について検討した。その結果a)C57BL/6とbm1マウス(クラスIMHCのみ異なる)のコンビネーションにおいて、bm1脾細胞をC57BL/6マウス静脈内に前感作することによりbm1アロ抗原特異的なThの免疫寛容が誘導されること:b)皮膚移植においても生着期間の延長効果が認められること:c)更にbm1脾細胞静脈内前感作後、bm1皮膚移殖片をacceptしているC57BL/6マウスではTh型CD8^+T細胞のみならず抗bm1CTL型CD8^+T細胞の寛容も誘導されていることも確認された。
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