研究概要 |
免疫グロブリン遺伝子は,B細胞においてのみ遺伝子の再配列とその発現が生じる. このような免疫グロブリン遺伝子の細胞特異的な発現調節には, CiSに作用するDNA領域と, それらに対してtransに働きかける核内蛋白因子が重要な働きをする. 特にトランスに作用する蛋白因子の解明は遺伝子発現のコントロールの解析に非常に重要である. 我々はヒト免疫グロブリンH鎖遺伝子を用いて,H鎖遺伝子のプロモーター領域およびエンハンサー領域に結合する核内蛋白を精製し,H鎖遺伝子の細胞特異的発現のメカニズムの解明を行みている. 本年度において明らかにした事は以下のごとくである. (1)ヒトH鎖プロモーター領域の保存された8塩基配列(ATGCAAAT)に特異的に結合する核蛋白をヒトBリンパ芽球細胞株より精製した. その分子量は74KDaであった. (2)ヒトH鎖遺伝子(再配列を終えた発現型DNA)を線維芽細胞(マウスL細胞株)に組み込んで得られた安定形質転換細胞では,H鎖遺伝子の転写は起らないが,この細胞に骨髓腫細胞あるいはB細胞株の核蛋白をマイクロインジェクションすると,H鎖遺伝子の発理誘導が生じる. H鎖遺伝子の発理する核内蛋白をこの方法を用いて精製した. 精製された96KDaの蛋白は,それ自体で,H鎖刷伝子の発現を誘導した. また,この蛋白は,H鎖エンハンサーのE3領域に相当する塩基配列に結合した. 現在 この蛋白のアミノ酸配列を決定中である. (3)ヒトH鎖遺伝子エンハンサー領域のE1領域に結合する核蛋白をB細胞より精製した. (4)in vivo,および in vitro転写系を用いて,上記の精製核蛋白の転写誘導活性を検討した.
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