研究概要 |
成熟個体におけるT細胞合化の分子機構を解明するために, 放射線昭射骨髄移植キメラマウスのT細胞抗原レセプター(TcR)遺伝子を解析した. 抗Thyl抗体と補体で処理した骨髄細胞のDNAには, TcRγ鎖,δ鎖遺伝子の再構成が認められなかったが, 長期培養系の骨髄細胞ではγ・δ鎖遺伝子の再構成が認められた. 骨髄でのT細胞前駆細胞レベルで, γ・δ鎖遺伝子の再構成がおこりうることが示唆される. キメラマウスの胸腺では, 骨髄移植後7日目から14日目にかけて宿主由来の胸腺細胞が増殖・分化する. 14日目頃より供給者(骨髄)由来の胸腺細胞が増殖し, 21日目の胸腺細胞は完全に供給者型に入れかわった. TcR遺伝子発現の時間的推移を調べると, 胎生期胸腺に認められるのと同様に, 宿主型・供給者型ともにγ, δ→β→γ鎖の順で発現がおこることが明らかとなった. 7日目の宿主型胸腺細胞に発現されているγ鎖およびγ鎖遺伝子の構造を調べると, Vγ_2ーVγ_1ーCγ_2,Vγ_1ーJγ_1ーCγ_4,Vδ_6ーDδ_2ーJδ_1ーCδで胎生期胸腺に認められるγ,δ鎖とは異なっていた. 成熟個体でのT細胞の分化過程は胎生期とは異なる経路をとるものと考えられている. 供給者由来の胸腺細胞の機能を調べるためにリンパ球混合反応(MLR),ナチュラルキラー(NK)活性, LAK(lymphokireーactivated killer)活性を測定した. γ, δ鎖の発現の多い14日目の胸腺細胞は高い自己MLRを示したが, アロに対する反応性は低くかった. 一方, γ・δ鎖が発現されている21日目の胸腺細胞は高いアロ反応性が認められるようになった. NK,活性はどの胸腺細胞にも認められなかったが, LAK活性は, 14日目, 21日目胸腺細胞ともに, 高い活性を認めた. 骨髄移植後21日目でのキメラマウスの末梢リンパ組織(脾・リンパ節)には, γーδ鎖T細胞は認めたものの, γ・β鎖T細胞はほとんど検出できなかった. これらの細胞には高いNK,LAK活性および遅延型足遮反応が検出できた.
|