T細胞は胸腺内で増殖分化する過程において、自己抗原に対する寛容性並びに自己MHC拘束性を獲得する。成熟固体におけるT細胞分化の分子機構を解明するために、放射線照射骨髄移植キメラマウスおよび胸腺移植ヌ-ドマウスに発現されるT細胞レセプタ-(TcR)を解析した。 (1)放射線照射骨髄移植キメラマウス……AKR/J(H-2^k、M1s^a)、C3H/HE(H-2^k、M1s^c)およびC57BL/6(H-2^b、M1s^b)マウスを用いて放射線照射骨髄移植キメラを作製し、胸腺細胞に発現されるTcRVβを検討した結果以下のことが明かとなった。(1)ホスト型並びにドナ-型胸腺細胞ともに、ホスト反応性T細胞とドナ-反応性T細胞の欠失がおこることによって、放射線骨髄移植キメラマウスが確立される。(2)胸腺における自己反応性T細胞の欠失には、骨髄由来の抗原呈示細胞が必要である。(3)自己反応性T細胞の欠失は、CD4^+CD8胸腺細胞レベルで起こる。しかしながら、自己抗原とTcRのアフィニティのちがいによってその時期が異なるものと考えられる。 (2)胸腺移植ヌ-ドマウス……BALB/c(H-2^d、M1s^c)ヌ-ドマウスにAKR/J(H-2^k、M1s^a)新生期または胎生期の胸腺を移植して、出現する末梢T細胞のTcRの機能を検討した結果、以下のことが明かとなった。(1)デトキシグラニジン処理によって胸腺上皮だけを移植した場合、胸腺型に対して反応するT細胞の欠失はおこらず、胸腺上皮だけでは自己反応性T細胞の欠失を起こし得ないことが明かとなった。(2)リンパ球混合反応は、胸腺上皮だけを移植したヌ-ドマウスでも低下しており、MHCクラスIIに対しては、胸腺上皮のみで寛容性を誘導できるものと考えられる。
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