研究概要 |
本年度は、脳卒中易発症高血圧自然発症ラット(SHRSP)の高血圧が確立する前、生後5週齢より生後7週齢までの血清脂質の動向を検討した。血圧値は、生後5週齢ではSHRSPとその対照の正常血圧ウィスタ-京都ラット(WKY)との間に有意な差はみられない。生後5週齢以降からSHRSPの血圧が上昇し始め、7週齢では有意な差が認められる様になる。血清中の総コレステロ-ル(Ch)、その分画であるVLDL-Ch、LDL、HDL-Chは5週齢で、既にSHRSPが高い。しかし、7週齢では、これらの血清Chの濃度は、逆に、WKYの方が有意に高値を示すようになる。その他、リン脂質等も同様の動向を示した。このようにSHRSPにおいては、血圧が上昇していく段階で血清脂質代謝の変化が認められた。 併行してSHRSPとWKYのアポ蛋白B-100のゲノムDNAの遺伝子解析も行った。両ラットの肝よりゲノムDNAを調製し、14種類の6塩基認識を主とした制限酵素により、両ラットのDNAを切断した。プロ-ブは、7つの5'末端から3'末端まで14,619塩基全てを含んだヒトアポ蛋白BcDNAを用いた。それぞれのcDNA領域に対応するラットのDNA上の変異について、サザンブロッティング法により検討した。その結果、いずれの制限酵素を用いても、両ラットのRFLPに有意な差はみられなかった。従って、用いた制限酵素の切断部位におけるDNAの変異および大きな欠損は存在しない可能性が示された。 低血圧自然発症ラット作製の為の選択交配は昨年に引き続き行われているが、なお世代を追う必要がある。
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