研究概要 |
nーヘキサンの一定濃度に対して種々の濃度のMEKを混合暴露し, ラットの尿中代謝物の変化を観察した. ウイスター系雄性ラット24匹を6匹ずつ4群に分け, nーヘキサン2000ppmに対して,MEK200ppm,630ppm,2000ppmを混合暴露し, 一群は対照群とした. 暴露は小動物用有機溶剤吸入暴露装置を用い, 8時間暴露を行った. 暴露中,暴露終了直後から16時間,16時間後から24時間後,24時間後から40時間の尿を代謝ケージを用いて採集し, 尿中代謝物を分析した. 尿検体は各々2等分し,一方は直接ジクロロメタンで抽出し, 他方は酵素処理と酸処理を行ってグルクロン酸抱合,硫酸抱合を解いて抽出を行った. nーヘキサンの尿中代謝物としては2,5ージメチルフラン,MBK,2ーヘキサノール,2,5ーヘキサンジオン,γーバレロラクトンが同定された. nーヘキサンによる多発神経炎の原因物質と考えられている2,5ーヘキサンジオンの尿中排泄量はMEK濃度が高い方が有意に少なくなっていた. これはMEK混合暴露によるnーヘキサンの神経毒性増強と矛盾する結果である. そこで,混合暴露の際の血中代謝物の変化を明らかにするために,nーヘキサン2000ppmとMEK2000ppmを混合暴露して,血中のnーヘキサン代謝物を経時的に測定した. 結果は尿中代謝物と同様にnーヘキサン単独暴露よりMEK混合暴露群の方が血中nーヘキサン代謝物が著しく減少していた. 従って, nーヘキサンの代謝物2,5ーヘキサンジオンのみではnーヘキサンの毒性機序は説明できないことが明らかとなった. 現在は慢性混合暴露の際の末梢神経障害,尿中及び血中代謝物の変化の実験を始めているがまだ結果はでていない.
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