研究概要 |
鉛による短期暴露の影響をみるため8週齢のウィスター系雄性ラット(約250g)へ3日連続、鉛として0、10、50mg/kgを腹腔内投与した。3回目の投与後、約20時間絶食を負荷し断頭屠殺後肝を摘出し常法に従い肝ミクロソームを抽出した。これを用いヘムオキシゲナーゼ(HO)活性を測定したところ鉛の50mg/kg投与群では対照群に比べ活性が4倍増加した。このとき肝ミクロソーム分画のヘム、シトクロムP450、b5の低下がみられていた。HD活性はHOとヘムの結合により開始されることを考えると、このヘムの低下とHO活性増加の関係は今後の検討課題として残された。HO活性の増加に伴い血清ビリルビン値の増加が予想されたが、この短期暴露ではビリルビンの変化はみられなかった。また鉛を10週間投与(0,5,20mg/kg)した時も血清ビリルビン値に変化はみられなかった。鉛の生体影響を他の化学物質と比較するため有機溶剤(メチルブチルケトン)MBK,メチルエチルケトン;MEK)や抗てんかん薬(ジフェニルヒダントイン;DPH)をラットへ背面皮下投与または経口投与しこれらのヘム代謝への影響をみた。MBKは薬物代謝酵素(アニリンヒドロキシレース,アミノピリンデメチレース)活性を増加(またMBKによるシトクロチP450の誘導生成が観察された。DPHは肝及び骨髄ヘム代謝のいづれにも影響を及ぼし、肝ポルフィリン体の蓄積増加やFEPの増加がみられた。造血部位への鉛の影響をFEPの動態で観察することが適当であると考えられたのでまづFEPの測定単位(μg/dl、μg/dl・PCV、・μg/g-Hbμg/g-Heme)と貧血評価の点から検討した。その結果、FEPμg/g-Hbが貧血の度合を効率よく示すことが判明した。今後は、この単位を用いて労働現場における鉛影響評価を検討せねばならない。なお現在は、鉛結合性赤血球蛋白を分離同定中である。
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