研究概要 |
予備調査として, 老人性睡眠・覚醒障害の実態把握および老人の問題行動と睡眠の関連性についての実態調査を計画していたが, 関係諸機関の協力体制が十分でなく, 62年度においては医用データ装置の信頼性およびデータ処理の準備作業が主で, 脳波記録による終夜睡眠パターンの解析に関与する交絡因子の検討・把握にとどなった. つまり, 成人学生24名, 老人ホームの老人118名を対象に選び, 老人の睡眠・覚醒リズム障害をとらえる付随指標として血圧, 体温, 脈拍を測定し, HalbargのCOSINOR法によりリズム性の有無を判定するとともに, 平均(Messor), 振幅(Amplitude), 頂点位相(Acrophase)を算出し, 統計処理により以下の成績を得た. 1.血圧・体温・脈拍のリズム性は, ともに老化によって容易に消失しない. 2.特に体温は, 加齢の影響を受けにくく, 理想的なコサインカーブに近いリズム変動を示し, 再現性もあることからも, 日内リズムの観察に最適といえる. 3.老人の最高血圧は, 成人に比し平均で25mmHg高く, 伏幅は1.5〜2倍, 頂点位相は2〜4時間のずれがある. 4.脈拍についても, 頂点位相は成人に比して老人は, 3時間のずれがある. 5.血圧・体温・脈拍ともに運動・食事・精神的緊張などの影響を考慮し, 常に安静を保った上で測定することが重要である. 6.また, 併せてリズム性の検討のため, HalbargのCOSINOR法に基づくデータ処理のためのプログラム開発を行った.
|