研究概要 |
3-methylsulphonyl-4,5,3′,4′-tetrachlorobiphenyl(3-MSF-TCB)および7,8-benzo-flavone(ANF)の芳香族炭化水素水酸化酵素(AHH)活性に対する作用を比較・検討することにより、2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxin(TCDD)あるいは2,3,4,7,8-pentachloradibenzofuran(PenCDF)により誘導されるcytochrome P-450(P-450)を調べ、次のような結果が得られた。両化学物質により、Ah応答性の3系統ではLM6がきわめて優先的に誘導され、Ah非応答性の3系統では主にLM4とLM6が誘導されるようである。 すべての実験を終了し、全デ-タをTCDDあるいはPenCDFの生体作用および毒性発現における遺伝的Ah応答性の関与について解析し、次のような研究結果が得られた。1)肝および胸腺重量の変化については、PenCDFよりもTCDDのほうがAh応答性との関連性が高かった。2)AHH誘導性については、肝と肺では明確な系統差は認められなかったが、腎ではAh応答性系統のほうが、かなり高かった。3)病理・組織学的所見では、TCDDあるいはPenCDFによる肝病変はAh応答性系統で高度であったが、腎を含む他の臓器では両化学物質によると考えられる明確な病変は観察されなかった。4)両化学物質の免疫毒性作用や細胞分裂指数に対する作用については、Ah応答性による明確な差異が認められなかった。 上記のような研究結果と、これまでの研究報告などを考慮して、次のような総括が可能であろう。TCDDやPenCDFはAh応答性に関連する構造遺伝子を活性化し、酵素を誘導する。一連の酵素誘導により発現される生物学的作用もあると考えられる。しかし、種特異的あるいは臓器特異的な毒性を発現するためには、酵素誘導だけでは不十分のようである。それと同調して、それぞれの毒性発現に特異的な、別の遺伝子あるいは因子の関与が必要であると考えられる。
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