我々は、マウスにメタンフェタミンとモルヒネを併用投与すると、それらの毒性が増強されること、又、メタンフェタミン単独投与よりもさらに著明な体温上昇が起ることを示した。昨年度の報告書において、ドーパミンあるいはモルヒネの遮断薬を前処置することにより、メタンフェタミンの体温上昇にはドーパミンが重要な役割を果しているが、モルヒネによるメタンフェタミンの体温上昇の増強効果に対しては、オピオイドレセプターが重要であることを示した。本年度は、これらの体温上昇に対するノルエピネクリン及びセロトニンの影響を調べた。α、β、セロトニンの各受容体の遮断薬として、それぞれトラゾリン(5mg/kg)、プロプラノロール(5mg/kg)、ケタンセリン(2.5mg/kg)を用い、メタンフェタミン(5mg/kg)あるいはモルヒネ(100mg/kg)投与の30分前に皮下投与した。尚、体温(直腸温)は体温・皮膚温用温度計測器K923(宝工業K.K)にて測定した。いずれの遮断薬も、モルヒネ単独投与による体温下降に対しては、その下降を増強した。メタンフェタミン単独投与では、やや体温が上昇するが、その上昇に対してトラゾリンは効果なく、プロプラノロールは上昇を遅らせ、ケタンセリンはそれ自身による体温低下をさらに下げた。メタンフェタミンとモルヒネ併用による著明な体温上昇に対しては、トラゾリンは効果なく、プロプラノロール及びケタンセリンは、これらの単独の時よりもやゝ体温が下降し、その後徐々に上昇するが、前処置をしなかった時の体温には至らなかった。これらの結果からメタンフェタミンやモルヒネによる体温変化には複雑な生体アミンの関与が示唆された。
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