メタンフェタミンとモルヒネの単独あるいは併用による投与後の死亡率と体温の変化がマウスを使って研究された。300mg/kgのモルヒネ(LD_<so>は670mg/kg)とメタンフェタミンを併用投与すると、メタンフェタミンのLD_<so>は95mg/kgから5mg/kgに減少した。又、モルヒネの投与(300mg/kg)は低体温を示し、一方メタンフェタミンの投与(5mg/kg)はわずかに体温を上昇させるが、両者を併用投与すると著明に体温が上昇した。死亡率においても、又体温変化においても、メタンフェタミンとモルヒネの併用投与は毒性の増強を示した。 メタンフェタミン(5mg/kg)とモルヒネ(100mg/kg)の併用による体温上昇の増強に対する神経伝達物質の関与を調べるために、それらの受容体の遮断薬を前投与して、体温変化を調べた。その結果、メタンフェタミンによる高体温は、ハロペリドール(ドーパミン遮断薬)とケタンセリン(セロトニン遮断薬)によって完全に抑えられたが、ナロキソン(モルヒネ拮抗薬)によって逆に増強された。一方、メタンフェタミンとモルヒネの併用による体温上昇は、ナロキソン、ケタンセリン、プロプラノロール(βー遮断薬)により抑えられたが、ハロペリドールによっては抑えられなかった。トラゾリン(αー遮断薬)は、メタンフェタミン単独あるいはメタンフェタミンとモルヒネ併用による体温上昇には、全く関係なかった。これらの結果から、メタンフェタミンとモルヒネの併用による体温上昇の増強には、モルヒネレセプターや生体アミンが複雑に関与していることが示唆された。
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