研究概要 |
アルコール代謝に関与するアルコール脱水素酵素(ADH)及びアルデヒド脱水素酵素(ALDH)の多型現象がアルコール代謝全般に及ぼす影響を調べる為に, 健康な被験者に対し, エタノールを経口及び経静脈投与して, 静脈血中のエタノールとアセトアルデヒド濃度を経時的に測定し, アルコール代謝の状態を調べた. 1.ALDH正常型及び欠損型被験者に, 空腹時に体重1kg当り0.1, 0.2, 0.4gのエタノールを経口及び経静脈投与し, 投与後の血中エタノール濃度曲線下面積を算出した. 両投与法を比較すると, 経口投与では経静脈投与に比べて, 曲線下面積が各投与量毎にそれぞれ33%, 25%, 20%減少し, 経口投与したエタノールの一部は全身循環血に達する迄に, その吸収過程に於いて代謝されたことが判明した. 即ち, エタノールが初回通過効果を受けたことが示された. 又, 曲線下面積はエタノールを少量投与した時程減少率が大きく, エタノールの初回通過効果は少量投与時に於いてより明瞭に認められた. 血中アセトアルデヒド濃度は, ALDH正常型被験者では殆ど上昇しなかったが欠損型被験者では10μM以上に上昇した. 経口投与と経静脈投与で血中アセトアルデヒド濃度に差はなかった. 2.食事後に体重1kg当り0.1gのエタノールを経口及び経静脈投与したところ, 両被験者共に血中エタノール濃度は空腹時に比べて極端に低く, 1時間以内に0となった. 血中アセトアルデヒド濃度は, ALDH正常型被験者では殆ど上昇しなかったが, 欠損型被験者ではエタノールのピークと一致して最高値に達し, その値は経口・経静脈投与何れの場合も空腹時投与の時の濃度に比べて高値を示した.
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