研究概要 |
長期血液透析患者に合併するアミロイドーシスは, 手根管症候群や肩・膝関節症など骨関節症状を引き起こすが,その発症機序は不明である. 本研究では, 透析アミロイドーシンの成因を明らかにする目的で,アミロイド組織の生化学的分析と病理組織化学的検討を行ない, 以下の結果を得た. 1.心アミロイドの分析:透析9年後に著しいCa沈着を心肝に起こした剖検例の左心室壁よりCa沈着物を採取した. このCa化合物は赤外吸収スペクトルによりhydroxyapatiteと同定されたが,同時に病理学的にアミロイドの沈着を認めた. このアミロイド蛋白を,4Mグアニジン塩酸と0.5MEDTAで可溶化後,免疫沈澱と組み合せたSDSー電気泳動法によりβ_2ーmicroglobulinと同定した. 一方,免疫組織化学的分析により,心筋内のCa沈着と共存するアミロイド沈着はβ_2ーmicroglobulinの抗体と反応することを確認した. 2.尿路結石と腎尿細管腔内円柱の分析:長期透析患者の腎は萎縮し,しばしば嚢胞形成がみられるが,これらの腎の腎孟内や膀胱内より得た泥状の結石を分析したところ,中心部のCa化合物は蓚酸カルシウムであり,この中にはβ_2ーmicroglobulin由来のアミロイドが共存していることがわかった. また,萎縮した腎の尿細管腔には,β_2ーmicroglobulin由来のアミロイド沈着を伴った円柱(アミロイド円柱)がみられ,中心部には蓚酸カルシウムの沈着を伴ったものもあり,尿路結石と同一の組成であることがわかった. 3.免疫組織化学的分析:β_2ーmicroglobulin由来のアミロイド沈着は,アルユヤンブル染色陽性となり,アミロイドP成分の特異抗体が陽性に反応することが確認された. 4.β_2ーmicroglobulinを血中より除去する透析法の臨床効果については検討中である. 透析アミロイドーシスは,β_2ーmicroglobulinとともに,Ca,ムコ多糖,アミロイドP成分がアミロイド形成に大きな役割をもつことを明らかにし,治療法を確立する上での新しい知見を得た.
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