我々は本科学研究費助成金により、当研究室で従来より取扱っている抗原非特異抑制因子(MNSF)に対するモノクローナル抗体(M06)を作製し、その免疫化学的特性について明らかにしてきた。M06抗体はMNSFを特異的に認識し、他の無関係な蛋白とは全く反応しない。従って、M06抗体を利用したアフィニティー・クロマトグラフィーによるMNSFを純度の高い単一な物質として精製できた。このMNSFをアミノ酸配列決定装置により分析した結果、N末端から20残基が明らかになった。このアミノ酸配列データをもとに、すでにMNSF産生ハイブリドーマより調製済みのDNAライブラリィーを利用してMNSFの構造遺伝子の決定を急いでいる。 一方、M06抗体を用いて、マウスMNSFの'counterpart'がヒトにも存在することが半明した。両者は生化学・免疫化学的特性が酷似しており、ヒトMNSFはマウスの系で作用を及ぼすが、マウスMNSFはヒトには働かない。この様にヒトにも抗原非特異抑制因子が存在する事実は、臨床的にも興味深く、自己免疫疾患を含めた各疾患患者のその動態を明らかにするとともにヒトMNSFの単離・精製を現在行なっている。 また、M06抗体を利用したMNSF抗原を微量的定量するためのELISA法を確立した。この定量法により、MNSFそのものをバイオ・アッセイより迅速に測定でき、かつ正確にその量を絶対量として把握できる。このアッセイ・システムにより、自己免疫疾患モデルマウスにおいては、MNSFの産生能力が低下していることが判明した。逆に、MNSFを補ってやるとその病態が改善するという興味ある知見も得られている。M06アフィニティ・カラムにより得たMNSFをさらに逆相高速液体クロマトグラフィーによりさらに単一に純化したものについてのエピトープを解析している。
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