研究概要 |
(1) アルツハイマー病患者脳に関する神経伝達物質受容体からみた研究: アルツハイマー病患者3例の脳と中枢神経疾患を有しない患者2例の脳について,各種神経伝達物質,神経ペプタイドreceptorの定量的in vitro autoradiogtaphy法による比較,検討を行った. 脳凍結標本からcryostat切片を作製し,in vitro receptor autoradiographyを施行した. ligandとしては,acecylcholine muscarinic receptorのうちM_1には^3Hーpirenzepine,M_1+M_2には^3HーQNB,dopamine receptorには^3Hーspiperone,GABA receptorには^3Hーmuscimol,somatostatin receptorには^<125>Iーsomatostatin,aspartate receptorには^3HーNーmethylーDーaspartate(NMDA)を用いた. 現像されたフィルムはIBASーII画像解析装置(Zeiss社)により解析して,それぞれのreceptorの定量的局在を観察すると共に,Unnerstadtの式を用いてreceptorの絶対値を算出した. muscarinic receptorに関しては,アルツハイマー病患者脳では,正常脳に比較すると前頭葉,頭頂葉,側頭葉では差は認められなかったが,海馬CA_1領域では結合濃度が低下していた. somatostatin receptorについては,測頭葉において,特に深増で,結合濃度が低下していた. 一方,興奮性アミノ酸receptorの一つであるNMDA receptorは若年発症のアルツハイマー病脳では海馬から側頭葉で増加しており,老年期発症のアルツハイマー病脳では同部位で減少していた. (2) ラット脳におけるbasal forebrain核の大脳皮質と海馬のコリン作働性支配:ラットにおいて,basal forebrain核破壊後の大脳皮質と海馬におけるacetylcholine esterase 活性を組織化学的および^3HーQNBを用いたin vitro autoradiographyによって解析した. basal forebrainにカイニン酸注入後7日目には,傷害側の大脳支質と海馬でAchE活性は低下し,^3HーQNBは前頭葉,頭頂葉で結合濃度が増加していた. これらの変化は傷害後1年を経過した動物ではほとんど認められなかった.
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