研究概要 |
肝炎ウイルス(DHBV)感染群,化学発癌剤投与群 プロモーター投与群及びこれらを重複投与群での発癌実験を開始し,すでに発癌剤投与群3羽に肝癌の発生を見た. これらはいづれも肝炎ウイルスに感染した群であった. スプロモータ(フェノバルビタール)投与感染アヒルにも肝発癌を観察し, 現在更に長期追跡中である. 本年はまた,すでにあった肝癌,及び非癌部からDNAを抽出し,クローニングの手法により,癌部から3個,非癌部から1個の組み込まれたDHBVーDNAクローンを得てその構造解析を行った. まづ癌部から得たクローンは以下の特徴を有していた. a)DHBV-DNAのDRという部分から組み込まれている頻度が高かった. b)組み込まれたDNAは欠損,再編成が著しく,特にCーgeneの欠損が著しかった. c)組み込まれた周辺の細胞DNAも再編成をきたしていた. これらの特徴はヒトHBVで見られた肝癌DNA中の組み込まれたDNAの構造と同様であり,DHBVがヒト発癌のモデルとなり得る事が分子生物学的な面からも明らかとなった. また,癌と非癌部の組み込みDNAの構造の差異を検討する目的で非癌部からのウイルスDNAの構造も解析した. 癌部と異なり,得られたクローンには欠損,再編成は見られづ, 極めてDHBVーDNA本来の形態をとどめていた. しかしながらその長さはウイルスDNA1個の長さよりも長く,2個のウイルスDNAが組み込まれたその面端が欠損された形態を示していた. 以上より,癌部及び非癌部の間には組み込まれたDHBVーDNAの形態に大きな差がある点が明らかとなり,この差異の機能的な面を追求する事により,ウイルス発癌の機構解明にせまれるものと考える.
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