研究概要 |
当教室においては,カニクイ猿腎由来で無血清合成培地にアダプトしたJTCー12ーP_3細胞株におけるHAVの増殖をすでに確認しているが, この系で得られたHAVの物理化学的性状を検討する目的で,ウィルス抗原陽性の細胞抽出液を分離用超遠心機による塩化セシウム液中の密度平衡遠心にて検索し 各分画の抗原力価をHAVABMキットを用いたサンドイッチ法にて測定した所,比重1.32の部分に軍一のピークとして抗原の存在を認め,同分画の電顕的検索によって直径27nmの球形粒子の存在を確認した. JTCー12ーP_3細胞におけるHAV粒子の増殖過程を電顕的に検索した所HAVと考えられる直径27nmの粒子は,多くは細胞質内の膜系によって囲まれたVesicle内に認められたが, 一部において細胞質内にて膜系に囲まれずに,Matrix領域中に結晶状排列をとって観察された. これらの粒子は何れも, Protein A金コロイド粒子を用いた免疫電顕法によってHAVとして抗原性を有することが確認された. HAV増殖の形態〓において,従来はVesicle内での存在しか報告されておらず,エンテロウイルス一般の増殖の形態〓とは異るものとして理解されて来たのであるが,我々の観察によってエンテロウイルス一般に見られる如き結晶状排列が見られたことに意味がある. 培養組胞系におけるHAVの増殖においては,細胞変性効果(CPE)は観察されないので,生体内における肝細胞障害機序については,CPE以外の機序の関与も考えられているのであるが,HAV感染JTCー12ーP_3細胞を用い,非感染JTC細胞を対照として,NK細胞,LAK細胞活性等の非特異的免疫機構が障害機序に関与する可能性を検索した所,ヒトリンパ球を使用した場合は,感染非感染の間に有意の差はなかったが,JTC細胞と同種のカニクイザルリンパ球を使用すると,両者の間に有意の差がみられ,この機構が関与している可能性が示唆された.
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