ガストリンの生成分泌機構を分子生物学レベルで解明するのが本研究の目的であり、これまでラットにおいて迷走神経切離後、ガストリンmRNAは胃前庭部粘膜において上昇してくることを認めている。またガストリンは、カルボキシ(C)末端がアミド化されているペプチドホルモンの一つであり、生理活性発現には(末端のアミド化が必須である。ガストリンのC末端部位のプレプロガストリンの配列は、-Phe-Gly-Arg-Arg-と続いている。-Arg-Arg-という塩基性ジペプチド配列部位により、トリプシン様蛋白分解酵素が働き切断され、-Phe-Gly-よりPAM活性の作用により-Phe-NH_2とC末端がアミド化されるのである。C末端にglicineが延長したプロガストリン.プロセッシング中間体の存在を、合成ペプチドTyr-Gly-Trp-Met-Asp-Phe-Glyに対する抗体を利用したRIAにより認めた。またC末端にglyaineが延長したプロガストリン(gastrin-G)に対するモノクローナル抗体を作製し、これをRIAに用いgastrin-Gの生成分泌動態を検討した。 ラット胃前庭部粘膜組織培養のもとに^<35>S-methionineを短時間(30分)培地に加えた後、経時的に^<35>S-methionineのガストリンおよびgastrin-Gへのincorporationを検討した結果、^<35>S-methionineはまずgastrin-Gへincorporateされ、その後ガストリンへincorporateされていくことが認められた。このことはガストリンのプロセッシングは、まずトリプシン様蛋白分解酵素の作用によりプレプロガストリンの塩基性ジペプチド部位が切断されG34-G、G17-Gという状態になり、さらに分泌顆粒中のPAM活性によりG34、G17が形成されるものと考えられた。
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