研究概要 |
細胞増殖調節因子としてカルシウムイオン(Ca)とマグネシウムイオン(MMg)は種々の細胞機能に関与し, ともに重要な役割を果たしている. 今回, 類上皮細胞肉芽腫を形成するサルコイドーシス(サ症)において, 肺胞マクロファージ(Mφ)の分化と類上皮細胞肉芽腫形成との関係におけるCaの役割について検討を試みた. Caの動態については, 細胞内Ca濃度を蛍光試薬Quin2により, 顕微鏡蛍光測定法により, 細胞内Ca濃度と細胞機能, および活性型ビタミンD3添加による影響について検討した. サ症の気管支肺胞洗浄液(BAL)中のMφを単離し, 種々の濃度のCa,Mg,活性型ビタミンD3,retinoic acidを添加して, MφのNBT還元能, グルコース消費量の細胞機能と細胞表面抗原の変化を検討し, 細胞内Ca濃度の測定を行なった. MφのNBT還元能, グルコース消費量は種々の濃度の添加剤により亢進し, またモノクローナル抗体を用いた細胞表面抗原の変化では各種単球由来の表面抗原が増加した. しかしMφ内Ca濃度の測定では, 従来の蛍光分光光度計では不安定で, 再現性が悪かった. 細胞内へのイオンの出入りは比較的短時間に生じ, 微量であるため, 誤差が生じやすく, 測定値が一定しなかった. 今後はフローサイトメトリーにより測定する予定である. 次年度は今年度の結果をふまえて, 測定方法の改善をする予定である. また測定のばらつきの原因として, BALより採取したMφのViabilityが悪いことも考えられた. 実験手技の安定化が不可欠であり, 方法の見直しを検討中である.
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