研究概要 |
サルコイドーシス(サ症)は原因不明の肉芽腫形成疾患であり、全身諸臓器に肉芽腫を形成するため各種の臓器障害を来す慢性難治性疾患である。この肉芽腫は類上皮細胞により形成され、この類上皮細胞は肺胞マクロファージの分化と関連があるとされている。これらの細胞の分化、増殖において、細胞内Ca^<2+>動態が深くかかわっていると考えられるため、細胞内のCa濃度の測定を行ない、細胞機能および分化との関係を検討した。またこれらの過程におけるIFN-γ,活性化vitD_3、retinoic acidの影響についても検討した。サ症MΦにIFN-γ,活性化vitD_3、retinoic acidを添加したところ、NBT還元能、グルコース消費能、TNF産生能といった細胞機能はすべて亢進し、単クローン抗体を用いた細胞表面抗原の検討にて、DR抗原、DQ抗原、IL-2R、各種単球由来抗原量は増加した。正常者MΦを用いて同様の検討をしてみたところ、サ症に比べて弱いながらほぼ同様の反応が得られた。次にIFN-γ、活性化vitD_3、retinoic acid添加的のMΦ内Ca^<2+>の動態をMaugerらの方法で検討してみたところ、サ症、正常者共に薬剤添加15秒後より細胞外より内へのCa^<2+>の急速な流入が認められた。そこで、これら薬剤の効果がCa^<2+>の細胞内濃度上昇に起因している可能性につき次に検討した。Ca^<2+>ionophore,A23187をサ症MΦに添加(1nM〜200nM)してみたところ、濃度依存性にMΦに各種細胞機能、表面抗原量の増強を認めた。正常者MΦでもサ症に比べて弱いながらほぼ同様の結果を認めた。以上より、MΦの機能、分化に対して細胞内Ca^<2+>が深く関与していることが判明した。更にIFN-γ、活性化vit-D_2、retinoic acid等の薬剤添加にてMΦの機能等が増強したが、これは細胞内Ca^<2+>濃度上昇を介した反応と考えられた。サ症MΦ、正常者MΦ共に細胞内Ca^<2+>濃度上昇に対して同様の反応を示したが、サ症において反応がより強度であったことより、この反応性の違いがサ症発症に関与していることが推測される。
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