HTLV-I associated myelopathyの臨床と発現機序の研究

1988 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 62480208
• 研究機関: 鹿児島大学
• 研究代表者: 納 光弘 鹿児島大学, 医学部, 教授 (10041435)
• 研究分担者: 出雲 周二 鹿児島大学, 医学部附属病院, 助手 (30143811)
• キーワード: HTLV-I / レトロウィルス / HAM / HTLV-I associated myelopathy / ミエロパチー

研究概要

我々により報告されたHTLV-I associated myelopathy(HAM)は、ヒト・レトロウィルスによりおこる脊髄麻痺として現在世界的に注目され、その病態の解明は緊急の課題となっている。本年度は、HAMの臨床と発現機序に関する研究を引き続き行い、次の実績をあげることができた。(1)自験HAM130症例の臨床ならびに検査データーをコンピューターに入力を完了した。(2)全国のHAM疫学調査の結果、昭和63年12月21日現在の集計で710例が集計された。すなわち確実例589例(男性175、女性414例)、疑い例121例(男性49、女性72例)であり、確実例の平均年齢は53才(11〜81才)であった。発症前の輸血歴は確実例の23.6%(139)例に認められ、抗体陽性の輸血が中止された昭和61年11月以降に血液銀行経由で、輸血を受け発症した例は全くなくなっていたことが明らかになった。一方、HAMの病態を知るために、HAM患者末梢血中の活性化CD8陽性細胞の抗HTLV-Iエフェクター機能について解析した。リンパ球をCD4、CD8分画に分離し、CD4分画細胞だけの培養では、HTLV-I抗原陽性細胞は全固定リンパ球中の33.1%に発現したが、CD8分画細胞の比率が増えるに連れてHTLV-I抗原の発現が抑制された。このことよりHAM患者の末梢血CD8陽性細胞には、自己CD4陽性細胞中のHTLV-I抗原陽性細胞中のHTLV-I抗原陽性細胞を抑制する免疫エフェクターが存在することが明らかとなった。また、HAM患者における免疫エフェクターの動態を見るため治療前後の末梢血と髄液中のリンパ球のサブセットの変化を検討したところ、HAM患者ではCSFのTサブセットはCD4^+DR^+/CD4^+、CD8^+DR^+/CD8^+が、正常対象に較べて増加しており、ステロイド治療でCD8^+DR^+/CD8^+が減少することが明らかとなった。

研究成果

• [文献書誌] Koichiro Usuku,et al: Annals of Neurology. 23. S143-S150 (1988)
• [文献書誌] Isao Kitajima,et al: Autoimmunity. 1. 125-131 (1988)
• [文献書誌] Kusuki Nishioka,Ikuro Maruyama,et al: Lancet. 1. 441 (1988)
• [文献書誌] Mitsuhiro Osame,et al: Hematology. in press.
• [文献書誌] Gustavo C.Roman;Mitsuhiro Osame: Lancet. 1. 651 (1988)
• [文献書誌] Shuji Izumo,et al: Neurology. 38. 242 (1988)
• [文献書誌] Mitsuhiro Osame.et al: 感染症学雑誌. 62. 240-248 (1988)
• [文献書誌] Mitsuhiro Osame,Akihiro Igata,et al: "Neuroimmunological Diseases -- Recent Advances in pathogenesis and Treatment Cliical-Epidemiological Study of HTLV-I-Associated Myelopathy" University of Tokyo Press, 1-409 (1988)
• [文献書誌] Shunro Sonoda,Mitsuhiro Osame: "Neuroimmunological Diseases --Recent Advances in Pathogenesis and Treatment Genetic Analysis of the Patients with HAM and Adult T-cell Leukemia Cell" University of Tokyo Press, 1-409 (1988)
• [文献書誌] Takeshi Tabira,et al: "Neueoimmunological Disease --Recent Advances in Pathogenesis and Treatment Recent Progress in Treatment of Autoimmune Encephalomyelitis Using Animal Models" University of Tokyo Press, 1-409 (1988)
• [文献書誌] Mitsuaki Yoshida: "Neurology and Neurobiology VOL.51,HTLV-I and The Nervous System,Molecular Biology of HTLV-I from Adult T-cell Leukemia(ATL)and Chronic Myelopathy(TSP/HAM)" Alan R.Liss, 1-620 (1988)