研究概要 |
本年度科学研究費で認められた細胞内Ca^<2+>濃度や顕微2次元分光測光装置は, 従来未だ商品化されていない機種を新しく開発する段階から出発した為に, その研究は未だ不十分であるが,下記の通りの成果が出て, その一部は次頁に示す如く, 文献発表を行った. 1.心筋変性過程の解析による新知見:心筋壊死に先立って細胞内にCa^<2+>が過剰に流入し, これが原因又は増悪因子として働くことは昨年報告した. その過程で, 従来Ca^<2+>の透過性を高める外因性物質としてプロスタグランジンやロイコトリエンが働くと考えられているが, 今回の実験で詳細に細胞障害過程を検討した結果, 上記生物学的活性物質なむしろ細胞障害の結果, 心筋細胞から放出されるのであって, 原因ではない事を示した(次頁文献1). 2.心筋代謝障害の非侵襲的計測: 昨年度我々は新しく開発した^<31>PーNMRスペクトルスコピーにより, 生体内心筋の代謝を体表面から測定できる事を示したが, 本年なこれを更に発展させ^1HーNMRイメージングと併用して生体内の解剖学的な位置を確認した上で心筋の位置で高エネルギー燐酸化合物の代謝を正確に知る事ができることを発表した(文献2). 3.心筋代謝障害の中の収縮能低下をきたす要因の決定: 上記の如く心筋虚血状態には多くの代謝性変化が並行して起る為, これらの要因の中で心筋収縮能の低下や心不全をきたす原因を決定することは難しかった. 今回我々は, グリセリン処理筋の発生張力を種々の条件下で測定し, 細胞内のpHの低下と無機燐の蓄積が積極的に収縮能を低下させる事, また細胞内pHが酸性になるとATPの消費に比較し発生張力が減少し, ATPが無駄に使われる可能性を示した. これは現在投稿受理され, 印刷中である.
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