研究概要 |
コラゲナーゼ処理により得た家兎単一心室筋細胞を用いて,一過性外向き電流とその心拍不整への寄与について吸引電極を津用したパッチ・クランプ法にて検討した. 家兎心室筋細胞においては,これまでプルキン工線維・心房内特殊細胞・房室結節細胞などでしか認められていなかった一過性外向き電流(Ito)が存在することを明らかにし,本電流が-20mvよりプラス側で活性化され,Ca^<2+>電流と重複していることを見出した. 本ItoにはCa^<2+>電流非存在下にても活性化され,4ーアミノピリジンにて抑制される成分(Ca^<2+>ー非感受性成分)と,Ca^2電流存在下でのみ活性化され,カフェインにより抑制される成分(Ca^<2+>ー感受性成分)に二つがあることを明らかにした. さらに,このうちCa^<2+>ー非感受性成分はその不活性化からの回復が遅く(回復の時定数は約2秒),このため回復の時定数の小さい(回復が早い)Ca^<2+>電流との動態の違いが,短い連結期の期外収縮において活動電位の持続時間が延長する機序であることを初めて明らかにして報告した(Ciic.Res.60;14ー26,1987). さらに,このCa^<2+>ー非感受性成分の活性化ー不活性化の膜電位依存性やそのイオン担体が主にK^+であり,一部Na^+も関与することなどの新知見を得た. 一方,Ca^<2+>ー感受性成分は,Ca^<2+>電流の抑制・細胞内EGTAの注入,外液Ca^<2+>のSr^<2+>への置換,リアノジン投与などにより抑制されるところから,流入するCa^<2+>ないし貯蔵庫から放出されるCa^<2+>増加により活性化されるK^+電流であることを心筋にて初めて明かにした. このものの不活性化からの回復は早く,かつ高頻度刺激をつづけることにより増大することを見出した. これらのことより徐拍時にはCa^<2+>ー非感受性成分が,頻拍時にはCa^<2+>ー感受性成分のItoがそれぞれ再分極相に寄与すると言う心臓生理学にとって極めて重要な事実を初めて明らかにした(投稿中). また,この両者とCa^<2+>電流の動態の違いが活動電位の交代現象の成因になることを示した(投稿中).
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