研究概要 |
大動脈圧と呼吸により同期した31PーMRSを用いて, ブタ60匹を対象に冠動脈(左前下行枝)開塞ならびに再開通を行い, creatine phosphate, ATP, inorganic phosphateおよびpHを測定した. 冠動脈結紮後, 20分および40分に Sacrificeしたブタの心を電顕固定し, 組織所見と31PーMRS所見の対比を行った. その結果, 以下の結論を得た. [I]側副循環がないために冠閉塞後, 支配冠動脈灌流域の局所心筋血流量が貫壁性にほぼゼロとなるブタでは冠閉塞10分でceratine phosphateはゼロとなり, inorganic phosphateはコントロール値の2倍と著しく変化した. しかしATPはコントロール値の64%, pHは6.5(コントロール7.2)と低下の程度は軽度であった. 40分の冠閉塞ではATPはコントロールの10%, pH5.9に低下し, inorganic phosphateは3倍に増大した. 電顕所見では20分冠閉塞でグリコーゲンは著しく減少したが, 核のクロマチンの凝集, ミトコンドリアの変化は軽度であった. 他方40分冠閉塞では高度の核クロマチンの凝集, ミトコンドリアの浮腫およびdense desposit,cell membranceの断裂等の不可逆性細胞障害を示す心筋細胞が心筋内層を中心にみられた. すなわち心筋細胞の不可逆性障害はATP10%以下ということと対応すると思われた. [II]10分冠閉塞後の再開通ではcreatine phosphateは3分以内にATPは1時間以内に改善した. 20分冠閉塞ではcreatine phosphateは6分以内に正常化したが, ATPは再開通120分でも回復がみられなかった. 20分冠閉塞120分再開通後の電顕所見では心筋細胞に正常域コントロールと比較しグリコーゲンの減少はまだみられたが, 核, ミトコンドリア, 細胞膜に異常と思われる所見はなかった. すなわちATPの改善がないことに対する電顕所見は観察できなかった. 以上より, 31PーMRSは虚血性変化に対し電顕所見よりも, よりsensitiveで今後の発展が期待できる.
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