研究課題/領域番号 |
62480215
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
藤原 久義 京都大学, 医学部, 講師 (80115930)
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研究分担者 |
三浦 厳 大塚製薬K.K, エネルギー代謝研究センター, 所長
河合 忠一 京都大学, 医学部, 教授 (70025659)
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キーワード | 31PーMRS / High energy phosphate / ブタ / 電子顕微鏡 / βブロッカー / 虚血 / 再灌流 |
研究概要 |
昨年度、大動脈圧と呼吸により同期した31PーMRSを用いて、側副循環のないブタ60頭を対象に冠動脈左前下行枝の閉塞・再灌流を行い、creatine phosphate、ATP、inorganic phosphateおよびPHを測定した。今年度はこのモデルでブタ42頭を対象にβブロッカーであるpropranolol(0.6mg/kg)、carteolol(10ug/kg)およびCa拮抗薬であるverapamil(200ug/kg)を静注し、その影響を31PーMRSと電顕所見で対比した。その結果、以下の結論を得た。 [I]コントロールでは20分の冠閉塞でcreatine phospateはゼロ、ATPは6%に低下、PHは6.5に低下、inorganic phosphateは約2倍に増大した。冠閉塞40分後にはATPは10%となり、以後ほぼゼロとなった。他方、薬物前投与群では冠閉塞20分でATP値は有意に高かった。しかし、このATP保譲作用は冠閉塞40分後には消失した。電顕所見においても虚血心筋細胞障害の程度は虚血20分で薬物投与群で有意に軽度であったが、冠閉塞120分後には高度となり、コントロールとの差は消失した。血圧ならびにdouble productはコントロールと薬物投与群で差はなく、かつブタの心には側副循環がないためこの虚血心筋保譲作用は虚血心筋細胞に対するβブロッカーならびにCa拮抗薬の直接作用によると思われる。 [II]20分冠閉塞後の再灌流においてコントロールではcreatine phosphate、inorganic phosphate、pHは10分以内に正常化したが、ATPは120分再灌流においても改善しなかった。他方carteolol前投与群ではATPは再灌流後改善し、再灌流120分で正常化した。ATPの改善は後投与群(再灌流直前より投与)ではみられなかった。βブロッカーによる再灌流時のATPの改善は前投与群においてのみみられるので、その機序は冠閉塞時の虚血心筋保護作用によると思われる。このことは、βブロッカーは再灌流時の回復機構を促進しないことを示している。
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