研究分担者 |
柳沼 淑夫 自治医科大学, 循環器内科, 教授 (00048985)
三戸 惠一郎 川崎医療短期大学, 助教授 (40078027)
小笠原 康夫 川崎医科大学, 医用工学, 講師 (10152365)
辻岡 克彦 川崎医科大学, 医用工学, 助教授 (30163801)
藤原 巍 川崎医科大学, 心臓外科, 教授 (90090224)
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研究概要 |
本研究は,心筋内微小循環系とくに容量血管の冠循環調節における意義を明らかにし,その病態生理を動物実験および臨床研究により解明することを目的とした. このため動物実験では,冠流入圧を制御しつつ,光ファイバ型レーザドプラ血流計を用いて,心筋内微小循環系への流入部(冠動脈),流出部(冠静脈)血流を計測した. 一方,臨床研究では,80チャネル20MHz超音波血流計を用いて,心臓手術時にヒト冠動静脈血流を計測した. 麻酔開胸犬において,光ファイバ型レーザドプラ血流計で,冠静脈血流を計測し,コンピュータにより冠灌流圧と心拍を制御することにより,心筋内微小循環系の容量血管の機能的特性および,それが拍動性冠静脈血流をいかに調節しているかを明らかにした. その結果,心筋内容量血管は機能的に内圧変化を伴わずに容量の変化しうるunstressed volume(UV)と通常のコンプライアンスより構成されていること,UVは血液貯溜に適した特性を有するがその大きさは5ml/心筋100g程度であることが明らかとなった. 次に種々の方法で冠血流を変化させたとき,冠静脈血流は心筋内容量血管に貯溜する血液量と高い相関を示したが,冠静への血流搾り出しの時定数とは有意の相関がなかった. 従って,冠静脈血流は,主としてUV内に貯溜する血液量により調節されていると考えられる.心臓手術時に20MHz80チャネル超音波血流計によりヒト冠動脈およびバイパスグラフト内血流速プロフィルを計測した. その結果,狭窄部血流の収縮期成分が多くかつ流れスペクトルが広く心筋への流入が十分得られないことが示された. また,バイパス部血流については内胸動脈バイパス内の血流速プロフィルが大伏在静脈バイパスのそれに比してより整って放物線状を示し,同バイパスの長期開存率の高さとの関連において興味ある結果であった. ただ,ヒト冠灌流圧制御が困難であるため,ヒト心筋内冠循環系の特性の定量的解析は残された課題となった.
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