研究課題/領域番号 |
62480221
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
荒川 規矩男 福岡大学, 医学部, 教授 (90078783)
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研究分担者 |
笹栗 学 福岡大学, 医学部, 助手 (00178675)
出石 宗仁 福岡大学, 医学部, 講師 (20131807)
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キーワード | アンジオテンシン / ブラジキニン / ヒドロキシプロリン / キモスタチンナファモスタット / 心筋梗塞 |
研究概要 |
キニン・テンシン系の生体内での作動状況を確認するためラット後肢血管床でのアンジオテンシン(ANG)II産生能の検討を行った。本血管床にANGIを投与するとANGIIへの変換が起こり、潅流圧をも昇した。この変換はアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬によって阻害される事から、既知のACEによるものと思われた。同じ血管床においてトリデカペプチドレニン基質からもANGIIが産生された。こちらはアプロチニンでやや抑制されたがACE阻害薬で抑制されず、キモスタチンで強く抑制された。従ってラット後肢血管床にはACEと異なるANGII産生酵素が存在することが示唆された。この未知の酵素の同定、並びに天然の基質(アンジオテンシノーゲン)に作用し得るか否か、またキニン・テンシン系酵素としての性質を備えているかなどについて検討中である 既報のカリクレインによる新しいキニン〔ヒドロキシプロリン^3〕-リジルブラジキニン(〔Hyp^3〕-Lys-BK)産生と同様に、トリプシンもヒト血漿蛋白からBKと〔Hyp^3〕-BKを遊離した。ヒト血漿蛋白から遊離される通常のキニンと新しいキニンとの比は約3:1であった。これら新しいキニンは通常のキニンと同等の生理活性(血圧下降、子宮筋収縮)を示した。さらに精製ACEを用いた実験でキニンはそのANG変換能を拮抗的に阻害した。つまり、キニンは生体内でそれ自体の血管拡張作用に加え、ANGII産生抑制をも介して循環調節に関与し得る事が示唆された。 両側腎摘尤の冠動脈結紮により局所でのANGIIとキニンの産生量が増加した。変換酵素阻害薬の前投与は、キニンの上昇のみを促進した。ナファモスタットの前投与は両者を抑制した。両薬剤とも心筋梗塞領域を減少させたが、ACE阻害薬の方がより有効であった。従って虚血組織におけるANGIIの産生増加は心筋障害的に、またキニンの産生増加は心筋保護的に作用していると考えられた。
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