研究分担者 |
中谷 敏 国立循環器病センター, 研究所, 循環動態機能部研究員 (30198121)
山岸 正和 国立循環器病センター, 病院, 総合外来科医員
永田 正毅 国立循環器病センター, 病院, 第五循環器科医長
別府 慎太郎 国立循環器病センター, 研究所, 循環動態機能部室長 (40113500)
宮武 邦夫 国立循環器病センター, 病院, 第一循環器科医長
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研究概要 |
冠動脈の血流を超音波パルス・ドプラ法を用いて非侵襲的評価を試みた. 対象は左室肥大や拡大があり比較的良好な心エコー図が得られる例,肥大型心筋症20例,拡張型心筋症10例,大動脈狭窄,閉鎖不全20例,大動脈弁置換例28例の合計78例である. 使用装置は36MHzの超音波断層ドプラ装置(東芝SSHー40A)である. 冠動脈の検索は種々のアプローチにて,断層心エコー図にて血管の描出とその血管内でのドプラ法による血流検出を行った. しかし, 検出は左冠動脈主幹部および左前下行枝にて可能性が見い出された. 左冠動脈主幹部は,血管像は得られたがドプラ入射角が90°近くになるため,ドプラ血流計測が困難であった. そこで左冠動脈前下行枝を目標に検討した. 結果:78例中26例にて1〜2mm径の血管様エコーと血流ドプラ信号が心臓表面,前室間溝近くで検出された. 血流パターンは,拡張期,第II心音に引きつづき急速に流速を増し,拡張期全般にわたり速い流速がつづく特徴的なものであった. この特徴的血流は,この血管以外の部位では検出されず,また,電磁流量計にて報告されている冠動脈血流パターンと同じであり,それに加え,心カテーテル法により直接左冠動脈へ注入されたコントラストにてこのドプラ信号は増強されたこと,また位置関係より,これら超音波法にて検出した血管は左冠動脈前下行枝と考えられた. 各疾患における冠動脈の最高流速は左大型心筋症で44〜71cm/recと拡張型の25〜43cm/recより速かった. また,大動脈弁置換例の24〜71cm/recよりも速い傾向があった. 以上,超音波法による冠動脈血流の検出には, まだ検出率が低値であり, 検出手技も複雑である. それに加えて血管径の計測が難しいなどの問題点が残されてはいるが, 血流の検出, 血流速度の計測の途が開かれたものと考えられる.
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