研究課題
一般研究(B)
冠動脈の血流を超音波パルスドプラ法を用いて非侵襲的評価を試みた。初年度は経胸壁からのアプロ-チによるもので、使用装置は主として3.6MHzの超音波断層ドプラ装置である。その結果左前下行枝に於いては1〜2mm径の血管とその中に血流ドプラ信号が見いだされた。血流パタ-ンは拡張期第二音に引続き急速に流速を増し、拡張期全般にわたり速い流速が続く特徴的なものであった。これにより各種心疾患の冠血流速を見た。肥大型心筋症では44〜71cm/secと拡張型心筋症の25〜43cm/secより速く、その病態を反映し、ニトログリセリン負荷により流速は低下するのが見られた。この様に経胸壁からのアプロ-チにても冠動脈血流が評価できたが、検出率は低く、血管径の測定に難があるなど問題点は残された。第二年度には経食道法によりアプロ-チした。これは外径9mmの胃カメラ先端に超音波探触子を装着したものである。左冠動脈主幹部の描出は容易で検出率は概ね80%であり、いずれもパルスドプラ法にて冠血流が検出し得た。これによる拡張期最大血流速度は40±14cm/secであった。開心術後に大動脈内バル-ンパンピングを行なった例では、その作動中に拡張期冠血流の増大が見られ、バル-ンパンピングの体循環補助に加えて、冠循環補助の効果が明らかとなった。一方右冠動脈に関しては、解剖学的位置関係や装置の出力感度の問題からなお検出率は低かった。将来、探触子の改良が進めば冠動脈血流の総合評価が可能となろう。最終年度はカテ-テル先端に20MHzの超小型探触子を装着した装置にて観血的に冠動脈血流を検討した。まず測定方法のFFT処理のゼロクロス法に対する優位性を明らかにし、それにより種々病態に対し測定を行なった。冠動脈狭窄例では正常例と異なり、拡張期最大流速の低下が見られた。本法は引続き検討中である。以上の如く種々のアプロ-チにより超音波ドプラ法による冠動脈血流の評価を行ない、その有用性と今後への展望を開いた。
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