研究概要 |
1.ラット甲状腺細胞FRTL-5細胞をNIH Dr.kohnより分与を受け、TSH-受容体抗体の測定方法の確立、各種自己免疫性甲状腺疾患に於ける病因、病態に関する意義について検討した。すなわちTSH-受容体抗体活性として、結合阻害活性(TBII)、刺激活性(TSAb)、刺激阻害活性(TSBAb)、ヨ-ド取り込み阻害活性、H^3-thymidineを指標とした増殖刺激活性の測定方法を確立し以下の疾患、病態に於いて検討した。 1).慢性甲状腺炎:小児期発症の萎縮性甲状腺炎患者血清にはTSH-受容体阻害抗体(TBII,TSBAb)は認められず成人とは異なる病因により発症することが示唆された。一方、TSH-受容体阻害抗体を有する慢性甲状腺炎の婦人が妊娠すると新生児に一過性甲状腺機能低下症を発症することは知られていた。我々は血清希釈により抗体活性を定量化する方法を確立し、妊娠中に新生児甲状腺機能の予後を予知し、超早期治療を可能にした。 2).バセドウ氏病:本症発症時にはTBII,TSAb共に陽性で、治療と共にその活性は低下してくる。治療中止の基準にTSAb活性を加えることにより、再発、寛解の予測が可能になった。バセドウ病の婦人が妊娠すると、その新生児に種々の甲状腺機能異常を来すことが知られている。新生児バセドウ病の発症にはTBII、TSAb共に関与するが、コントロ-ルの悪い母親からしばしば一過性低FT_4の新生児が生まれることを報告し、この時母親はTBII活性の強弱に関わらず、TSAbが弱いことを明らかにした。 3).クレチン症:本症の病因として母親血中の液性因子が関与しているとの報告がある。母児血清についてはTSH-受容体阻害抗体、ヨ-ド取り込み、サイミジン取り込み阻害活性検討したが、何も証明されなかった。 2.クレチン症マススクリ-ニング:わが国で開発されて約10年が経過した。6才以上に達した患児について全国共通な方法で精神神経学的予後調査を行った。一部に正常対象に比して劣っている結果が出たが今後共経過を見て行く必要がある。札幌市、北海道でpopulation-basisの頻度、病型の分析を行った。今後その予後についての検討が必要である。またヨ-ド代謝の検討を行い、スクリ-ニング精度を向上することが可能にな
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