研究概要 |
我々はEBウイルスを用いて健常人末梢血,骨髄移植後の寛解状態にある白血病患児末梢血,胎児肝および無ガンマグロブリン血症(CAG)患児骨髄血より計30株のBリンパ芽球様細胞株(BーLCL)を樹立した. これらの中には免疫グロブリン遺伝子の再構成が認められない極めて未熟なBーLCLや細胞質内に免疫グロブリンμ鎖のみが発現しているPre BーLCLが含まれていた. 本年度の研究の目的は, 7種のB細胞関連あるいは特異的マウス単クローン抗体を用い, それらに対応する抗原の発現態度を調べる事により, CAG由来BーLCLと胎児肝由来未熟BーLCLあるいは健常人由来BーLCLとの間に差が認められるか否かを明らかにする事にあった. 得られた結果は, CAG患児由来BーLCLと免疫学的に正常と思われる胎児肝あるいは健常人由来BーLCLとの間に, B細胞特異的あるいは関連抗原の発現様式に差はないと言う事であった. すなわちDD20,DD19,F_1εリセプターおよびHLAーDR抗原の発現が高率に全ての細胞株で認められた. CD21およびNuB1も程度の多少はあれ全株で発現していた. この事実は従来白血病細胞を用いた研究から得られていた知見とは異るものである. 白血病細胞を用いた研究からはHLAーDR→C^<9→C>0→CD20の順に表面抗原の発現があり, CD19の発現が認められる分化段階では既に免疫グロブリン重鎖遺伝子の再構成が認められている. 従って免疫グロブリン遺伝子の再構成が認められていない胎児肝由来BーLCLを含めてCAG患児由来の末熟BーLCLの表面抗原の発現様式の均一性, あるいは健常人由来BーLCLとの表面抗原発現様式の類似性は, B細胞の分化段階を正確に反映した現象と言うよりも, むしろEBウイルスにより樹立されたBーLCLに共通した発現様式と考えた方が妥当だと思われた.
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