研究概要 |
マウスおよびヒト多能性造血幹細胞に作用する増殖因子の検索を行い,各増殖因子の作用機構に関する基礎的検討を行った. 本年度の主要成績として以下のごとき結果がえられた. 1).われわれの開発した幹細胞コロニー法を改良した無血清培養により,効率よく幹細胞コロニーを形成させることが可能となった. これにより血清中の種々の因子の影響を除外することができ,各増殖因子の作用の解析が可能となった. 2).リコンビナント・インターロイキン2(rIL2),rIL3,rIL4,rIL6,rGーCSF,rGMーCSF,エリスロポエチンなどの造血因子を用いて幹細胞コロニー形成に及ぼす影響について検討した. FCS存在下ではrIL3添加により最も多くの幹細胞コロニーが形成され,次いでrIL6,rGーCSF,rGMーCSF,rIL4の順にそれぞれ濃度依存性にコロニー形成がみられた. 一方,無血清培養においてはrIL3以外の造血因子では幹細胞コロニーは誘導されなかった. 3).各種造血因子を種々組み合わせて幹細胞コロニー形成に及ぼす影響について無血清培養で検討した. 微量のrIL3存在下で,rIL6,GーCSFは著明に幹細胞コロニー形成を促進した. 以上より,多能性造血幹細胞に作用する増殖因子としては,現在のところIL3,IL6,GーCSFが最も重要であると考えられる. 4).IL3イIL4依存性細胞株を用いて造血因子反応後の細胞膜,胞体内のプロテインキナーゼC,細胞内Ca^<2+>を経時的に測定した. IL3,IL4反応後に明らかなPKC,Ca^<2+>の変化は細胞各分画においてみられなかった. 今後,大量培養した多能性幹細胞を用いて, 他のキナーゼも含めて検討する予定である.
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