研究概要 |
生後1日目及び60日目のSDラットの大脳半球を電気メスにて広範囲に焼灼した. 両群の処置ラットを, 術後1ヶ月, 2ヶ月及び3ヶ月以上の時点で屠殺し, 大脳及び腰髄の切片をHE, Nissle及びKB染色し, 組織学的に検索するとともに, 腰髄の一部はエポン包埋し, 1μ切片のトルイジンブルー染色標本として大脳皮質脊髄路の変化を検索した. 一部の処置ラットには腰髄後索にHRPを注入し, 残存ニューロンの可塑性を検索した. その結果, 1.一側大脳半球皮質を広範囲に焼灼したが, 死亡したり, 共喰いされるものはなかった. 2.各群とも術後軽度な運動障害と, 脊柱の右側弯曲を示した. 新生仔処置群では2週目でほぼ正常に歩行するようになったが, 60日処置群では3ヶ月後でも脊柱弯曲がみられた. 3. 組織学的には(1)新生仔処置群の健側(左)大脳半球は良好に発達し, 2ヶ月以後には大脳縦裂は処置側に著しく偏倚していた. また健側の大脳皮質幅は同日令対象群のそれよりも増大していた. しかし, 60日処置群ではこのような所見は乏しかった. (2)焼灼欠損部表面は上皮様組織で覆われ, 襄状になっていた. (3)延髄錘体路は各群とも焼灼対応側が著しく萎縮を示した. 4.脊髄では皮質脊髄路である後索腹側部に明らかな左右差がみられた. 健側では軸索の密度, 直径とも正常対象群と比較して明らかに増大していた. 一方, 処置対応側では軸索の密度は低下し, 太いものと細いものが混在していた. この所見は新生仔処置群で特に顕著であり, またこの細い軸索は加齢とともに増加した. 5.脊髄後索にHRPを注入すると, 両側の赤核と健側大脳皮質第V層のニューロンが染色された. 6.^3H・プロリン・オートラジオグラフィーは目下実施中である.
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