研究概要 |
昭和62年度の本研究により、我々はインターフェロンがヒト白血球やラット好塩 性白血病細胞株2H3からのヒスタミン遊離を増大させることを明らかにし、気管支喘息増悪因子としてのインターフェロンの生化学的意義の一端を明らかにした。昭和63年度においては、このインターフェロンのヒスタミン遊離・放出の増大を2H3を用いてさらに詳しく解析し、インターフェロンがhistidine decarboxylaseのADPーribosylationを介してこの酸素活性を増強し、ヒスチジンからのヒスタミン合成を盛んにして細胞内ヒスタミン含量を増加させることにより、I型アレルギー反応時におけるヒスタミン放出量の増大を来たることを明らかにした。また、インターフェロンは、ヒト単球細胞株U937やヒト好酸球細胞株EOL上の低親和性IgE受容体(FcεR2/CD23)の発現を増強させた。単球や好酸球上のFcεR2は、そこに付着した特異IgE抗体と対応抗原との反応を介して、単球の活性化やモノカインの産生、好酸球組織障害性顆粒蛋白の放出をきたすことが知られており、インターフェロンによるFcεR2発現増強は、これらの機序を介しても気管支喘息の増悪に関係すると考えられた。このインターフェロンによるU937細胞上のFcεR2発現増強は、αインターフェロンでは細胞内に誘導された2′,5′ーオリゴアデニル酸が関与するが、γインターフェロンではこの機序は関与していないと考えられた。また、γインターフェロンはU937細胞におけるFcεR2 mRNA発現を増強し、副腎皮質ホルモンはこの発現増強を抑制した。インターフェロンは、上述のように、ヒスタミン遊離増強やFcεR2発現増強を介して、気管支喘息増悪因子として働くが、この機序に関する今回の研究成果は、インターフェロンの多彩な生物学的活性を理解する上で、有用なものと孝えられた。
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