乾癬感受性遺伝子の制限酵素断片長の多型性に関する研究

1989 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 62480235
• 研究機関: 東海大学
• 研究代表者: 大城戸 宗男 東海大学, 医学部, 教授 (90055856)
• 研究分担者: 小澤 明 東海大学, 医学部, 講師 (20096209) ; 猪子 英俊 東海大学, 医学部, 助教授 (10101932)
• キーワード: 尋常性乾癬 / HLA抗原 / 制限酵素断片長多型性 / RFLP / 遺伝子DNA解析 / サザンハイブリダイゼ-ション / HLAクラスI抗原遺伝子 / 疾患感受性遺伝子

研究概要

昭和62、63年度の研究成果により得た知見よりそのDNAバンドのクロ-ニング、その制限酵素地図作成、塩基配列の決定などを試み、得られた結果について、臨床的意義について検討した。
1.アミノ酸配列の検討
HLAーC抗原遺伝子の塩基配列より推定されるアミノ酸配列を検討し、HLAーCw6、Cw7抗原に特徴的なアミノ酸配列を、すでにその塩基配列が報告されているHLAーCw1、Cw2、Cw3、Cw6、Cw7、Cw11、およひわれわれの施設でその塩基配列を決定できたHLAーCx52について、それらの塩基配列を比較検討した。その結果、HLAーCw6、Cw7にだけ認められる特異的なアミノ酸配列として、9番目のAspと90番目のAspが見出された。
2.乾癬発症におけるHLAの臨床的意義の検討
1)HLAーC抗原そのものが乾癬感受性遺伝子とすれば、9番目のアミノ酸は遺伝的多型性を示し、βシ-ト上でT細胞の誘導活性化にも関与していることから、乾癬では9番目のアミノ酸がその発症に強く関連。
2)連鎖不平衡説から、乾癬では、HLAーC抗原遺伝子に近接する乾癬感受性遺伝子が存在する可能性もある。
3)本症では、DR抗原との関連も認められ、T細胞の外来抗原認識のMHC拘束性による免疫応答機構とHLAの関連が示唆。
3.今後の課題
本研究により、乾癬では、HLAーC抗原遺伝子領域に乾癬感受性遺伝子の存在が強く示唆され、その特異的なアミノ酸配列として、9番目のAspと90番目のAspが見出された。しかし、本症の発症や病態におけるの機序解明には至っていない。その解明には、今回は到達することができなかったが、今回の結果より得られたDNAバンドクロ-ニング、制限酵素地図作成、塩基配列の決定などの成果が集積が必要と考えられた。

研究成果

• [文献書誌] 安藤麻子,猪子英俊: "ヒト移植抗原の遺伝子構造と機能" Human Cell. 1. 361-374 (1988)
• [文献書誌] Hajime Takata,Hidetoshi Inoko,et al.: "Colning and analysis of HLA class I cDNA encoding a new HLA-C specificity Cx52" Immunogenetics. 28. 265-270 (1988)
• [文献書誌] 小澤明,猪子英俊,大城戸宗男他: "HLAーC遺伝子領域における乾癬感受性遺伝子の解析ーRestriction fragment length polymorphismの検討ー" 日本皮膚科学会雑誌. 98. 954 (1988)
• [文献書誌] 猪子英俊: "HLA抗原のDNAタイピング" 日本臨床. 47. 550-576 (1989)
• [文献書誌] 猪子英俊: "ヒト移植抗原の遺伝子構造と機能" 今日の移植. 7. 320-325 (1989)
• [文献書誌] 小澤明,猪子英俊,大城戸宗男他: "尋常性乾癬に相関する遺伝子の解析ーHLAーC抗原のアミノ酸配列とその発症との相関についてー" 日本皮膚科学会雑誌.
• [文献書誌] 猪子英俊: "Annual Review免疫1988(MHC抗原とその遺伝子)" 中外医学社, 115-123 (1988)
• [文献書誌] 小澤明: "Symposium on Psoriasis 1988(乾癬とHLA)" 白取昭, 10-17 (1989)
• [文献書誌] 小澤明,中澤淳,猪子英俊(分担): "臨床免疫1990(尋常性乾癬とHLA)" 日本臨床社, (1990)
• [文献書誌] 中澤淳,小澤明(分担): "最近のトピックスClinical Dermatology 1990(HLAと皮膚疾患)" 医学書院, (1990)