研究概要 |
本研究は腫瘍の放射線治療に際して,その併用によって治療効果の改善が期待できるアデノシン誘導体の検索とその作用機序の解明を目的としている. この様な薬剤の検索ではin vitroとin vivoでの実験結果が一致しないことがしばしばある. 培養細胞レべルで研究を行なう時,スフェロイドは単細胞を用いた場合の欠点のいくつかを克服できるすぐれたin vitroの腫瘍モデルと考えられている. 本年度は研究材料としてのヒト腫瘍由来培養株の樹立,樹立細胞株の放射線感受性調査とスフェロイドの作製およびアデノシン化合物の細胞内代謝について研究を行なった. 1.ヒト腫瘍由来培養株の樹立:ヒト骨肉腫4株および子宮頸癌2株の培養株を樹立した. ヒト骨人腫は生検材料より直接培養株を得ることは困難であるのでヌードマウス移植を経て培養系になおす2段階移植法により,またヌードマウスから培養系に移す際マウス線維芽細胞が混入するため2重寒天倍地を用いてこれをとり除いて樹立に成功した. 樹立した株はparosteosarcoma(27才,♀)の原発巣とその肺転移巣,Osteosarcomaの肺転移巣(15才,♂)および原発巣(11才,♂)からの4株である. 2.樹立細胞株の放射線感受性:骨肉腫は放射線抵抗性であるといわれているが骨肉腫由来の細胞4株の放射線感受性は単層培養では特に低いということはなかった. 3.スフェロイドの作製と照射実験:骨肉腫の原発巣およびその肺転移巣由来の培養株でスフェロイドを作り放射線感受性を比較した. 現在実験中であるが両者の感受性に有意の差はないようである. 4.アデノシン化合物の細胞内代謝:人子宮頸癌HeLa細胞の放射線抵抗性株を用い,対数増殖期およびプラトー期の細胞に1ーまたは7ーデアザアデノシン(1ー,7ーdaAdo)を加えて種々の時間処理し,細胞内でのリン酸化を調べ,daAdoの細胞内での代謝がその潜在的致死障害からの回復抑制作用に重要であることを示唆する結果を得た.
|