研究概要 |
精神分裂病死後脳について今まで調べられたことのないドーパミンの取り込み部位の測定を行った. ^3HーGBR12935を標識リガンドとし, 3×10^<-5>Mのマジンドールで特異結合を求める方法を用いた. 対照脳の被殻についてスキャッチャード解析したところ, 結合部位は1部位と推定され, Bmaxは1,7fmol/mg蛋白,KDは0,99nMであった. 1nMの^3HーGBR12935を用いて測定した尾状核の特異結合は, 対照群0.131±0.013(n=10),分裂病群0.153±0.018fmol/mg蛋白(n=9)で有意な差はなかった. 一方, 被殻の値は, 対照群0.124±0.018(n=10),分裂病群0.171±0.012(n=11)で, P<0.05で分裂病群の値が有意に高かった. 次に, 同じく分裂病脳で測定されたことのないベンゾジアゼピン受容体について研究した. ^3Hーフルニトラゼパムを3×10^<-6>Maジアゼパムで置換して求めた対照側頭回のBmaxは, 759.6fmol/mg蛋白,KDは1.35nMであった. 1nMの^3Hーフルニトラゼパムを用いて脳内12部位で特異結合を求めた. 前頭前野3部位で分裂病の特異結合が有意に高く, 内側前頭皮質では対照の1,25倍であった. 側頭葉では3部位のうち, 中・下側頭回, 上側頭回で分裂病の値が有意に高かった. 運動領皮質,第2・3次視覚領域では差がなかった. 海馬2部位のうち, 歯状回では差がなかったが, アンモン角では分裂病の値が有意に高かった. 分裂病脳におけるベンゾジアゼピン受容体増加の意義を理解するため, 他のデータとの相関を求めたところ, GABA,^3Hーカイニン酸結合,チロシン水酸化酵素,ドーパミンD_2受容体数,サブスタンスPとそれぞれ正の相関があり, グルタミン酸と負の相関を認めた. 相関を示した測定値は, GABAを除き, 分裂病の異常所見として注目して来たものである.
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