精神分裂病の脳生化学的解析とその治療に関する研究

1988 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 62480243
• 研究機関: 信州大学
• 研究代表者: 融 道男 信州大学, 医学部, 教授 (20013972)
• 研究分担者: 小林 利雄 信州大学, 医学部, 助手 ; 清水 浩光 信州大学, 医学部, 助手研究生 (70178987) ; 小片 寛 信州大学, 医学部, 助教授 (30020861)
• キーワード: 精神分裂病死後脳 / ベンゾジアゼピン受容体 / メタンフェタミン / フェンシクリジン / フットショックストレス / 水泳ストレス

研究概要

前年度に引き続き、慢性分裂病死後脳のベンゾジアゼピン受容体について研究を行った。ベンゾジアゼピン受容体の増加がみられた脳部位のうちから、上側頭回のホモジネートを用い、200nMのCL218,872により1型、2型を分けて測定したところ、分裂病の1型受容体が対照に比し有意に増加していることが分かった。前年度測定した12部位に加え、視床の4部位(背内側核、前核、外側核前部、外側核後部)について、1nMの^3Hーフルニトラゼパム、3μMのジアゼパムを用いて測定したが、ベンゾジアゼピン受容体は分裂病、対照群間で差はみられなかった。分裂病死後脳でベンゾジアゼピン受容体の増加する機構を調べるために次のような動物実験を行った。60匹のラットを3群に分け、第1群にはメタンフェタミン5mg/kgを同じく腹腔内に投与、第2群にはフェンシクリジン10mg/kgを同じく腹腔内投与、第3群には注射用蒸留水を腹腔内投与した。注射終了後8日目に、それぞれの群から3分の1のラットに3mA、10分間のフットショックを与えた後直ちに断頭した。次に残りのうちから更に3分の1のラットを25℃の水中で10分間泳がせ断頭、歳りの3分の1は無処置のまま断頭した。脳は直ちに大脳皮質、線条体、間脳、海馬に分割し、ベンゾジアゼピン受容体を測定したところ、蒸垂水注射群およびメタンフェタミン注射群の間脳(視床、視床下部を含む)において、水泳ストレスを与えたラットの結合値が有意に増加していた。5μMGABAと100mMのNaClによって賦活した結合値でも同様の有意差を認めた。同部位について測定したGABA濃度による実験群で差はみられなかった。大脳皮質と線条体では各薬物間、各ストレス間で差はみられなかったが、海馬では、メタンフェタミン投与群において水泳ストレスを課した群の結合値が対照に比し有意に増加していた。

研究成果

• [文献書誌] 畑典男,清水浩光,小片寛,融道男: 薬物・精神・行動. 8. 61-62 (1988)
• [文献書誌] 融道男: 薬物・精神・行動. 8. 13-14 (1988)
• [文献書誌] 清水浩光,畑典男,小片寛,融道男: 精神薬療基金研究年報. 19. 241-250 (1988)
• [文献書誌] 融道男: 現代医療. 20. 3140-3143 (1988)
• [文献書誌] 融道男,木内祐二,小林利雄,竹内潤一 他: 精神神経学雑誌. 90. 820-828 (1988)
• [文献書誌] 吉川領一,小片寛,融道男: 精神医学. 30. 183-189 (1988)
• [文献書誌] 融道男: 綜合臨床. 37. 2125-2126 (1988)
• [文献書誌] Mitsushio,H.;Takashima,M.;Mataga,W.;Toru,M.: J.Pharmacol.Exp.Therap.245. 982-989 (1988)
• [文献書誌] Toru,M.;Watanabe,S.;Shibuya,H.;et al.: Acta Psychiat.Scand.78. 121-137 (1988)
• [文献書誌] Kiuchi,Y.;Kobayashi,T.;Takeuchi,J.;Shimizu,H.;Ogata,H.;Toru,M.: Eur.Arch.Psychiat.Neurol.Sci.
• [文献書誌] 融道男: Medical Pharmacy. 23. 49-53 (1988)
• [文献書誌] 融道男: "稲永和豊編「精神疾患の生物学的研究」" 医学書院, 116-134 (1988)
• [文献書誌] 武藤隆,融道男: "大原健士郎,渡辺昌祐編「精神科・治療の発見」" 星和書店, 104-124 (1988)
• [文献書誌] 融道男: "精神科MOOK NO.21「睡眠の病態」" 金原出版, 23-32 (1988)
• [文献書誌] 融道男: "杉下守弘編「脳から心へ、神経心理学へのいざない」" サイエンス社, 112-128 (1988)