研究概要 |
1.腹側淡蒼球(Ventral globus pallidus,VGP)破壊病変の免疫組織化学的検討:ーVGPに10nmolのカイニン酸を注入したラット脳において, コリンアセチルトランスフェラーゼ(CAT)活性を免疫組織化学的(PAP法)に検討し, コリン系ニューロンが選択的に破壊されていることを確認した. 2.VGP破壊ラットの大脳皮質CAT,Achのムスカリン性受容体の変化:一側のVGP破壊によって大脳皮質のCAT活性は減少する(7日後63.4%,12週後87.0%). また, Achのムスカリン性受容体は, 過感受性を示し, それが検討した期間中(12週)持続した. これは, ヒトのアルツハイマー型痴呆における後シナプス性受容体の所見を説明可能とするものである. 3.VGP破壊ラットの学習能力について:stepーthrough型受動的回避学習装置を用いて次の学習能力を調べた. 対照は偽手術群を用いた. (1)保持能力に及ぼすVGP破壊の影響;まず正常ラットに学習を獲得せしめたのちVGPを破壊し, その後の学習内容の保持能力を調べた. (2)VGP手術後の短期学習保持能力:獲得試行を1回だけ行い, 30分, 24時間48時間後に, どの程度学習が保持されているかを調べた. (3)獲得能力および長期保持能力に及ぼすVGP破壊の影響:まずVGPを破壊し, その後, 学習獲得能力の障害の程度を調べた. また, 一たん獲得された学習が, どの程度保持されるかを検討した. その結果, (1)(2)(3)のいずれにおいても, VGP破壊ラットは対照の偽手術群とくらべ学習能力は障害されていた. 4.VGP破壊による学習能力障害へのコリンエステラーゼ阻害剤の効果の検討:ーphysostigmine,THA,NIKー247などについて調べた. physostigmineは有意の効果なく, THA(3mg/kg),NIKー247(1mg/kg,3mg/Kg)において, それぞれ有意の効果が認められた. 本研究においてVGP破壊ラットの痴呆モデルとしての有用性が示された.
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