研究概要 |
バセドウ病患者血清中に高頻度に抗DNA抗体が存在する事そのものは臨床的なデータの解析から確実となった。そして未治療時高かった同抗体の力価は抗甲状腺剤による治療により低下してゆき、甲状腺が外来性のT_3により抑制されるようになるー即ち自働能がなくなるーとほとんどの患者で陰性となる。一方、一旦T_3で抑制可能になった患者の甲状腺が再び自働能を有するようになるー即ちバセドウ病の再燃ー時には本抗体はしばしば陽転する。そして多数例でみると甲状腺自働能の代表的血清学的指標であるTSHレセプター抗体(TRab)の力価と抗DNA抗体の力価は相関している。こうした事実より、アマシャム社のRLAキットで測定可能な抗DNA抗体がTRabなどと同様に甲状腺が自働能を在する時期に生産される自己抗体である事は確実であり、他の研究者により我々と全く独立して同様の報告がなされつつある^<1,2>。この活性の本態を明らかにする目的でプロティンAによる吸着、dsDNAとその他の核酸による結合阻害実験などを行う経過中、本抗体が通常の自己抗体と異なり著しく不安定である事が判明した。この点に充分注意して行った実験より本抗体はdsDNAとssDNAの両者に反応性のある抗体でIgGのみならずIgAやIgMもその活性の一部を担っている事が判明しつつある。しかしその著しい不安定性の故に更に詳細なin vitroでの解析は困難であった。又、本抗体の機能的意義を明らかにする目的で本抗体持続陽性者のTSab活性を測定したが、今のところ抗DNA抗体の力価とTSab活性との間に相関は認められていない。一方本研究の経過中、糖尿病患者にも本抗体陽性者が少なからず存在する事を見出し、内分泌疾患における自己免疫の関与という点で新しい視点を切開いた。1.Baethge,他.JCEM66:103,1988,2.Tach,他.JCEM67:1049,1988.
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