研究概要 |
本年度は, I型糖尿病のモデル動物NODマウスを用い. 膵島細胞におけるMHCクラスII抗原(IーA抗原)の発現を検討し, I型糖尿病の発症に及ぼす役割を分析した. 5日齢から24週齢までの雌NODマウス17匹, 5週齢から20週齢までの雄NODマウス6匹を対象とした. 比較のため, B10GDマウス6匹, BALB/cマウス6匹, C3Hマウス6匹を用いた. ブアン液による灌流固定の後, 各マウスより膵を摘出し, 切片を作成した. 膵島のIーA染色は, 抗IーAモノクローナル抗体を用い, Avidin-Biotin法による間接蛍光抗体法にて行った. またIーA陽性細胞を同定するために, インスリン, グルカゴン, ソマトスタチン, パンクレアティックポリペプチド(PP)に対する抗体をそれぞれ組み合わせた二重染色を行った. その結果, IーA陽性膵島細胞は, 検討した23匹すべてのNODマウスにおいて認められた. 蛍光強度は膵島により種々であった. 膵島への細胞浸潤(膵島炎)のみられる膵島のすべて, および膵島炎のない膵島の約半数において膵島細胞におけるIーA抗原は陽性であった. ホルモンとの二重染色を行ったところ, IーA陽性細胞はインスリン細胞とほぼ一致し, グリカゴン細胞, ソマトスタチン細胞, PP細胞とは一致しなかった. 一方, B10GDマウス, BALB/cマウス膵島細胞においても弱いながらIーA陽性細胞が認められた. しかし, C3Hマウス膵島においては, IーA陽性細胞は検出されなかった. 膵田細胞に発現されたIーA抗原の意義として, 膵島細胞に存在する膵島特異抗原をヘルパーT細胞に提供し, 一連の自己免疫反応を惹起する可能性が示唆された. 63年度は, 発症直後のI型糖尿病患者膵生検組織における検討を行う.
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