研究概要 |
われわれは, 血中コーチゾールが高値であるにもかかわらず, クッシング症候群の臨床徴候をまったく示さない家系(母子例)を見出した. これらの症例において, 末稍リンパ球, 培養線維芽細胞中のグルココルチコイド受容体数が, 正常人の50%に減少していることを証明することが出来た. 本年度の研究において, 本家系症例の線維芽細胞にたいするデキサメサゾンの効果を観察し, 細胞のグルココルチコイド抵抗性を細胞レベルで証明した. すなわち, 培養細胞に, 種々の濃度のデキサメサゾンを添加し, H^3ーチミヂンの細胞内取り込みで測定し, グルココルチコイドによる細胞増殖の抑制効果を観察した. その結果, 本家系症例の線維芽細胞では, 細胞増殖の抑制には, 正常細胞に比し, より高濃度のデキサメサゾンが必要であることを知った. このことから, 患者細胞のグルココルチコイド抵抗性をin vitroで証明できた. この業積を発表した. グルココルチコイド受容体異常を分子遺伝学的手法により解析するため, 本家系家族の末稍リンパ球を採取し, EbsteinーBarrウイルスによる, transformationを行ない, 永久継代株化を試みている. これにより, 分子遺伝学的な解析が可能になると思われる.
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